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竹林軒出張所

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『ターゲット ビンラディン』(ドキュメンタリー)

ターゲット ビンラディン 〜奇襲作戦の全貌〜 前編後編(2011年・英Nutopia)
NHK-BS1 BSドキュメンタリー

『ターゲット ビンラディン』(ドキュメンタリー)_b0189364_8213264.jpg 2011年5月の、米特殊部隊によるビンラディン奇襲・殺害事件を米政府側の視点から描いた番組。
 9・11以来ビンラディンの居所をずっと追っていた米政府であるが、ビンラディン周辺は、携帯電話やメールなどを使わずにアナログな方法で情報伝達を行っていたため、なかなか足取りが掴めずにいた(デジタルな方法だと特定が簡単だそうで)。ところが、ビンラディンにもっとも近い連絡係がたまたま携帯電話を使ってしまい、それによってビンラディンらしき人物の居所が特定されてしまう。当初はアフガニスタン山岳地帯の洞窟などに潜んでいるものと思われていたが、実はパキスタン領内の高級住宅街にある邸宅に住んでいた。ただし、このビンラディンと思われる人物、敷地外には一切出ずせいぜい広い庭で散歩する程度で、実のところ本人かどうかはつかめていない。このような状態で、米軍やCIAが乗り出してきて、無人偵察機や衛星を総動員しながら、この居所と人物を監視し始める。こうして1人の人間を殺害するために莫大な予算がつぎ込まれる。このあたりいかにもアメリカ的で、こういうところに僕などは大変な違和感を持つのだが、こういう感覚自体日本人的なのだろうか。
 ともかくそうやって居場所が特定され、監視と本人確認は続けられるが、並行してビンラディン奇襲作戦の準備も始まる。特殊部隊から精鋭部隊が集められ、作戦を練り上げる。同時に、ビンラディンの邸宅に似せた環境を軍施設内に作り上げ、奇襲の訓練を繰り返すのである。この間、政府中枢部の一部の人間以外、ビンラディン関連の作戦であることが明かされていない。またビンラディンの居場所が判明したこともすべて極秘情報になっている。
 そしてとうとう新月の日を狙って「作戦」が決行されることになる。ところがこの時点でも、特定されている「居場所」にいるのが本当にビンラディンかどうか正確にはわかっていない。この人物がビンラディンである確率は50%程度であることがオバマ大統領ら政府首脳に伝えられる。それでも大統領は決行を決意し、5月1日実行に移される。このとき「作戦」に繰り出されたのは、ステルス・ヘリコプター2台(パキスタン軍のレーダーに引っかからないようにするため)と支援のための大型ヘリコプター、60人あまりの特殊部隊である。途中ステルス・ヘリコプターが墜落してしまうというアクシデントはあったが、特殊部隊はそのまま邸宅に乗り込んで、邸内の男たちを殺戮し、ついにビンラディンを追いつめ、その場で殺して、そのまま死体を持ち帰ることに成功する。死体を持ち帰ったのはビンラディン本人であることを特定するためである。最終的にDNA鑑定でビンラディン本人であることが判明して、アメリカ政府にとっては万々歳ということになったのであった。ちなみに墜落したヘリは特殊部隊が爆破させた。住宅街の中だがそんなことはかまわなかったようだ。近隣の住民はさぞかしビックリしたと思う。
『ターゲット ビンラディン』(ドキュメンタリー)_b0189364_8205395.jpg この番組では、以上の過程が時系列で再現され、当事者たちのインタビューが間に挟まれる。インタビューには政府中枢の人間や特殊部隊のトップなども登場する。それになんとオバマ大統領までも登場する。ということは当然、この番組の製作に米政府が絡んでいるはずである。また、ドキュメンタリー風に仕立て上げられているが、断じてドキュメンタリーではない。あくまでも再現ドラマであり、しかも米側の一方的な視点で構成されている。そもそも1人の人間を殺すため、他国の住宅地に軍隊を送り込んで、家に侵入して居住者たちを殺戮することが正しいことか、本来ならそのあたりから検証したいところであるが、すべてが正義という前提で描かれているのだな、これが。こういうあたりがどうにも腑に落ちない。「極悪テロリストを追うランボー」みたいな構図であり、ハリウッド映画であればまだ許されるかも知れないが、しかしこれは実在の人物に対して行われた現実の「作戦」であるという点に注意が必要だと思う。番組はテンポ良く展開し、しかも緊迫感も十分再現されており、非常に質が高い。英国の製作会社が作ったことになっているが、おそらく相当な金額(それに強力な協力体制)が米政府からつぎ込まれたのではないかと推察される。ドキュメンタリーとしてはとんでもないがPRドラマとして見ればよくできているという代物である。で、僕の率直な感想は、アメリカを敵にまわすと恐ろしいな……ということなのであった。アメリカ人の野蛮さがよくわかる再現ドラマだった。
★★★
by chikurinken | 2012-05-14 08:24 | ドキュメンタリー
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