日本人なら知っておきたい日本文学
蛇蔵&海野凪子著
幻冬舎
日本の古典文学をマンガで紹介しようという本。紹介するのは『枕草子』、『紫式部日記』、『御堂関白記』、『大鏡』、『今昔物語集』、『更級日記』、『方丈記』、『徒然草』、『古事記』と非常に多岐に渡る。だが当然、どれもスーパーダイジェストで、面白い部分をちょっとだけ描き出した予告編といった趣になっている。絵はおおむね「萌えキャラ」というのか、可愛い三頭身キャラで描かれている。『更級日記』の著者、菅原孝標女などメガネっ娘キャラである。イメージはよく伝わってくるが、大胆というかやりすぎというか……(個人的にはこういうの好きだが)。
基本的に、日本語教師をやっているという海野凪子が古典文学の面白さを紹介し、それを蛇蔵という人が作画するというパターンだが、紹介されているエピソードは割合面白いものが多い。

取り上げている内容は、以前紹介した『セクシィ古文』(
竹林軒出張所『セクシィ古文(本)』参照)より正攻法で、現代的な感覚で取り上げているのも好感が持てる。たとえば『徒然草』で「最近やたら凝った名前を付ける親が多いがあれってどうなの?」と書かれているとか、『堤中納言物語』で「続きは第二巻で!」と書かれているにもかかわらず第二巻がそもそも存在していないとか、こういったエピソードがマンガでわかりやすく紹介されている。さすがに1000年近く残ってきた文学作品だけあって、どの話もひねりが利いていて面白いと思わせるものがある。日本の古典文学入門書としても良いんじゃないかと思う。高校の図書室に入れていただきたい本である。
★★★参考:
竹林軒出張所『ビギナーズ・クラシックス 御堂関白記(本)』竹林軒出張所『ビギナーズ・クラシックス 大鏡(本)』竹林軒出張所『更級日記 平安時代の元祖文系オタク女子の日記(本)』竹林軒出張所『源氏物語(上)(中)(下)(本)』竹林軒出張所『今昔物語(上)(下) マンガ日本の古典8、9(本)』竹林軒出張所『とはずがたり マンガ日本の古典13(本)』竹林軒出張所『平家物語(上)(中)(下)(本)』竹林軒出張所『太平記(上)(中)(下)(本)』竹林軒出張所『御伽草子 マンガ日本の古典21(本)』竹林軒出張所『奥の細道 マンガ日本の古典25(本)』竹林軒出張所『春色梅児誉美 マンガ日本の古典31(本)』竹林軒出張所『セクシィ古文(本)』竹林軒出張所『なんて素敵にジャパネスク(本)』