極楽家族
(1978年・NHK)
演出:松尾武
脚本:中島丈博
音楽:岸田智史
出演:ミヤコ蝶々、国広富之、大竹しのぶ、レツゴー長作、山本一郎、野川由美子、林美智子

これも過去数度見ている名作ドラマ。ストーリーはほとんど憶えており、いくつかのシーンも鮮明に憶えている。それくらい初見のときからインパクトがあった。脚本家、中島丈博の名前を知ったのもこのドラマがきっかけだ。登場人物の心の動きが実に巧みに表現されている上、ストーリーも非常によくできていて展開が自然である。よくよく考えると荒唐無稽な話ではあるが、シナリオと演出が巧みなため、「荒唐無稽」という言葉すらまったく意識の外にあった。
ミヤコ蝶々と山本一郎の老人夫婦のもとに国広富之が転がり込んで疑似家族を営むという話なんだが、とにかくシナリオの質が高く、当時の中島丈博が絶頂期であったことを窺わせる。出演陣の演技もまったく破綻がなく、ミヤコ蝶々と国広富之が特に印象的。国広富之はデビュー作の『岸辺のアルバム』の直後で、同じようなキャラクターを演じており、ミヤコ蝶々の老婆役もこれ以上ないくらいのはまり役である。ちなみにこのとき、蝶々さん58歳である。シナリオ、演出、演技がどれも一級だと、これほど素晴らしいドラマができあがるという例で、ドラマの古典と言うべき作品であった。
第33回文化庁芸術祭優秀賞
第19回モンテカルロ・テレビ祭UNDA賞受賞
★★★★参考:
竹林軒出張所『郷愁(映画)』竹林軒出張所『津軽じょんがら節(映画)』竹林軒出張所『シナリオ無頼(本)』『極楽家族』OP主題歌