フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ
(1966年・東宝、ベネディクトプロ)
監督:本多猪四郎
特撮監督:円谷英二
脚本:馬淵薫、本多猪四郎
音楽:伊福部昭
出演:ラス・タンブリン、佐原健二、水野久美、伊藤久哉、田島義文、田崎潤、中村伸郎

僕が昔通っていた学校で、在学中に学食が新築された。2階建ての建物で、1階と2階で別々のコンセプトで別店舗として営業するという。ついては学内で愛称を公募するということになり、結果さまざまな応募が集まった。結局リンデとかなんとかよくわからない名前がついて、ほとんどの学生はこの愛称をその後使うことがなかった。公募した愛称があまり使われないというのもよくある話ではある。さて、愛称の公募期間中に中間発表として、応募作がいくつか公表されたんだが、その中に「1階:サンダ、2階:ガイラ」というものがあって、子どもの頃にサンダ対ガイラを見ていた(僕を含む)学生はこれを見て大笑いしたものだった。リンデとかのようなわけのわからない名前にせずにサンダとガイラにしたら、一部の学生にとって親しみのある名前であることだし、もっとこの名前を活用していたかも知れない。「今日はサンダにする? たまにはガイラに行こうぜ」みたいな……ね。もっとも他の学校の学生から笑いものにされた可能性は高いが。
さて、われわれの子ども時代に大いに影響を与えた、このサンダとガイラが登場する映画は『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』という作品である。映画監督のクエンティン・タランティーノや俳優のブラッド・ピットにも影響を与えたというこの作品、僕も小学生のときにテレビ放送で見て、大いに感心した憶えがある。子ども向け映像によく見られるチャチな作りがあまりなく、子どもながらによくできていると思ったものだ。とは言え、これもすでに40年前の話で、その後はまったく映像を目にしていない。そこで、DVDも出ているということなので、今回見てみようかと思い立ったのである。
スタッフは、監督・本多猪四郎、特撮監督・円谷英二、音楽・伊福部昭と東宝特撮映画の常連で、毎度お馴染みのメンバーである。脚本の馬淵薫という人も、僕はまったく知らなかったが特撮映画のシナリオを沢山書いているお方のようだ。またキャストも、『ウルトラQ』の佐原健二に
『マタンゴ』の水野久美、東宝特撮の常連、田崎潤と、こちらもこなれたメンバーが集結している。この頃、こういったメンバーで同じような特撮怪獣映画が何本か撮影されており、本作もその一環として作成されたのではないかと思われる。この映画、実質的には前年に製作された
『フランケンシュタイン対地底怪獣』の続編みたいな扱いで、そのためかどうかわからないが、説明が随分端折られているという印象がある。たとえばいきなり「フランケンシュタインの研究者(学者)」が登場したりするんだが、前作を見ていない僕などは、フランケンシュタインの研究者が普通に存在することに相当な違和感を持つ。フランケンシュタインは、研究者がいるほど日常的な存在なのか…というレベルの話だが、そもそもなぜフランケンシュタインなのかという疑問も最後まで残る。また、自衛隊がガイラに対して殺獣光線を使おうなどと発案するが、こういう兵器があることについては何も説明がなく、非常に唐突な感じがした。
全体的には、特撮部分は非常によくできていて、なるほどこれなら子どもも納得という水準であった。ただし同時に、脚本が随分いい加減という印象で、ストーリーはかなりご都合主義的かつ荒唐無稽であった。
なんでも「海幸山幸」の神話を下敷きにしているという話で、山のフランケンシュタイン、サンダ(サンは山に通じるのか)と海のフランケンシュタイン、ガイラ(ガイは海に通じる?)が兄弟であるというのも、たしかに「海幸山幸」をイメージさせる。サンダが良いフランケンシュタイン、ガイラが悪いフランケンシュタインという設定になっているが、このあたりは「泣いた赤鬼」も連想させるところ。工夫は見られるが、チープであることには変わりない。
脚本だけでなく、演出もベタなものが多く、あまり感心しない。総じて特撮以外の部分は食い足りないという印象であった。特撮については、ガイラの登場シーン、ガイラの疾走シーンはなかなかインパクトがあって、優れた特撮映像に花を添えていた。
総じて、子どもの頃のインパクトは大きかったが、今見ると少し残念な気がする、そういう類の特撮映画であった。このころの(子ども向け)特撮映画というのはそういうものだったのだろうかと、少しばかり残念な思いにひたった。なお蛇足だが、伊福部昭の音楽は『大魔神』そっくりだった。
★★☆参考:
竹林軒出張所『フランケンシュタイン対地底怪獣(映画)』竹林軒出張所『ゴジラ(映画)』竹林軒出張所『モスラ対ゴジラ(映画)』竹林軒出張所『マタンゴ(映画)』竹林軒出張所『決戦 ! 南海の大怪獣(映画)』