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竹林軒出張所

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『にんじん』(映画)

にんじん(1932年・仏)
監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ
原作:ジュール・ルナール
脚本:ジュリアン・デュヴィヴィエ
出演:ロベール・リナン、アリ・ボール、カトリーヌ・フォントネ、コレット・セガル

『にんじん』(映画)_b0189364_9212776.jpg ルナールの小説『にんじん』の映画化。
 『にんじん』という小説、私の記憶が確かならば、小学校で学校図書として推薦されていたと思うが、しかし子どもが読むには内容がちとハード過ぎないかと、この映画を見て思った(映画が原作をどの程度反映しているかはわからないが)。
 母親につらく当たられ、父親には無視されるという、今でいう児童虐待を受けている少年「にんじん」の挫折と成長の話で、あまり救いがない話のようにも感じる。なんとなく作者ルナールの自伝的な話なんじゃないかと思ったりしたが、やはりそういう部分もあるようだ。理解してくれる大人がまわりにいるのが救いではあるが、それにしても普通の小学生向けの本だとは思えない。
 さて映画は、名匠デュヴィヴィエらしく、そつなく丁寧に作られていて、破綻はまったくない。「古典映画」としての十分な風格がある。デュヴィヴィエにとってこれが二度目の『にんじん』映画化だそうだ。なお、にんじん少年を演じた主演のロベール・リナンは、その後第二次大戦でレジスタンス運動に転じ、ナチスに処刑されたという。また父親役のアリ・ボールもナチスにスパイ容疑で捕えられ、それが原因で死んだらしい。暗い時代を目前にしたつかの間の平和な時期に作られた映画である。フランスの田舎の情景が美しい。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『地の果てを行く(映画)』
竹林軒出張所『望郷(映画)』
竹林軒出張所『舞踏会の手帖(映画)』

by chikurinken | 2012-04-01 09:22 | 映画
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