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竹林軒出張所

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『調査報告 原発マネー』(ドキュメンタリー)

調査報告 原発マネー 〜“3兆円”は地域をどう変えたのか〜(2012年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル
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 地域が原子力発電所の建設を受け入れる際、その自治体には多額の金が落ちることになっている。そうでないと、こんな危険なもの誰も受け入れてくれないからね。そこで、財政的に危機状態にある自治体は、この原発マネーにすがりつくことになる。このときに自治体に流される金は、大きく分けて、電源三法による国からの交付金、電力会社からの燃料税、電力会社からの寄付金の3つ。
 このうち国からの交付金は、田中角栄が首相だった時代の産物で、田中の地元、新潟県柏崎に原発をつくるときに実現したらしい。ということで柏崎市には大きな金が流れた。だがこの金は、施設(いわゆるハコモノ)の建設に使途が制限されていたため、必然的にあちこちに不要な建物を作ることになった。たとえば柏崎の博物館も原発マネーで建設された建物だが、維持費に年間8000万円以上かかるにもかかわらず、入場料収入はなんと年間89万円ときている。こうして、博物館だけでなくさまざまな建物の維持費だけがふくれあがることになった。交付金は年を経るごとに減少していくのが常なので、維持費そのものを維持することができなくなる。そのために、多額の原発マネーで潤ったはずの自治体の多くは、財政危機に陥ることになる。ひどい場合は、第2、第3の原発建設で自転車操業を繰り返す。これが福島、柏崎のケースである。福島なんて第一原発に原子炉が6基もあった。これが自治体の原発マネー依存症の実態である。
『調査報告 原発マネー』(ドキュメンタリー)_b0189364_8473136.jpg 原発マネーの中でもあまり明らかにされないのが寄付金で、これはなかなか表に出てこない。NHKは今回、情報開示請求を行って調査したらしいが、その結果、判明しただけでも全国で1400億円にも上る寄付金が電力会社から自治体に流れていることがわかった。この番組では青森県の例が取り上げられていたが、寄付金は県内の各自治体の首長に分配されていたという。そしてその多くは、県知事選挙で原発賛成派知事を支援する目的で使われたというのだ。
 こういった原発マネーは、NHKの調査によると、トータルで3兆円以上(判明分)にも上るらしい。で、この金はどこから出ているかというと当然電力会社からで、しかも電力会社はこういう金を電力料金に転嫁できるようになっている。というわけで、この金の出所は、元を正せば日本の高い電気料金なのであった。原発がなくなれば電気料金が高くなるなどという寝言を言っている人々がいるが、原発がまったくなくなればこういう無駄な出費がなくなるわけで、長い目で見れば電気料金はむしろ下げられるんじゃないかと思う。原発が高くつくことは世界の常識である。
 今まであまり明らかにされることがなかった原発マネーがこうしてNHKの全国放送で取り上げられるようになったのも、ひとえに去年のあの事故のためである。あの事故の教訓が生きていることはなによりであるが、また原発を復活させようという勢力が少しずつ出ているのも事実。反省することを知らない愚かしい人々にのせられてしまわないよう、十分気をつけなければいけない。
★★★★
by chikurinken | 2012-03-11 08:38 | ドキュメンタリー
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