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竹林軒出張所

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『怪奇版画男』(本)

『怪奇版画男』(本)_b0189364_836468.jpg怪奇版画男
唐沢なをき著
小学館文庫

 表紙を見ていただくとわかると思うが、版画でできたマンガである。ほぼ全ページ木版画で作っている。「ほぼ」というのは、紙版画がネタになっている箇所があって、そこは紙版画で作られているため。また一部魚拓もある。こういう例外を除いてすべて木版画である。奥付もあとがき(「あとぼり」)もすべて木版画。なんと帯まで木版画。ここまで徹底していれば、この行為自体が一つの芸術作品である。版画自体の質も高く、特に終わりの方はなんと2色刷(2版)、4色刷(正味7色、4版)までやっている。これを労作と言わずになんと言おう。
 で、マンガの内容は、版画男が出没して、市民に版画を彫れと強制するという短編ギャグ・マンガで、ストーリー自体はどうってことないんだが、しかし絵(版画によるもの)の徹底ぶりがやはり強烈なインパクトを残す。タイトルはおおむねシャレになっている(「鬼平版画帳」、「野菊の版画」、「網走版画イチ」など)他、タイトル画もいろいろシャレが効いていて面白い。たとえば第1話の「怪奇版画男」では、「版画男・神出鬼没ニシテ正体不明。ソノ性格凶暴ナルモワダバゴッホニナル」。ちなみに「わだばゴッホになる」は、版画家、棟方志功の著書のタイトル。バカバカしいけど面白い。全体を通じてそういう感じのマンガで、とにかく神出鬼没の版画男同様、このマンガ自体も「異色」である。
★★★★
by chikurinken | 2012-03-07 08:36 |
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