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竹林軒出張所

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ちょっとだけドライポイント

 相変わらず銅版画などというものを続けておりますが、銅版画といっても興味のない方にとっては「なんのこっちゃ」でしょう。
 日本の学校現場ではおおむね木版画がカリキュラムに組まれていますので、木版画については大抵の方がイメージを持たれていると思います。要は出っ張ったところにインクや絵の具を付けて、それを紙に刷り取る(つまり写す)という作業で、こういうのを凸版画といいます。出っ張っているところ(凸部分)を刷り取るので。
b0189364_20235296.jpg 一方、銅版画は凹版画と呼ばれ、へこんでいる部分にインクを入れて刷り取るのです。銅版画の刷りの現場を見たことがないとこれがもうひとつピンと来ないと思います。どうするかというと、何らかの手段であらかじめ銅板に絵や字を描いておきます。釘みたいなもので金属をひっかくと溝ができますが、ああいったものと思っていただければ結構。その部分が他より少しへこんでいるので、まずそこにインクを詰め込むのです。ローラーを使ったりタンポみたいなものでグイグイ力業でインクを押し込んだりといろいろな方法でやるんですが、この状態のままだとへこんでいない部分にもインクが付いてしまいます。そのため、このへこんでいない、つまり平たい部分は布で拭き取るのですね。そうすると、へこんだ部分に入ったインクはそのままで、平たい部分はインクがないという状態になります。この状態にして、銅板の上に濡らした紙を載せ、上から強い力を加える(通常はプレス機を使う)と、紙が溝に入り込んでインクを吸い取る……こうして絵ができあがるということになります。これが銅版画です。
b0189364_20241047.jpg で、実際に絵や字をどうやって銅板上に描くかというと、一般的に使われるのはエッチングという技法で、これは銅板全体をグランドという石油系の素材で薄く覆い、そこの上から細い鉄筆のようなもの(ニードルなどと呼ばれます)で描くという方法を使います。ニードルで線を書くと、その部分だけグランドが剥がれて銅が露出します。これを腐食液(銅を溶かす溶液)に浸けると、露出している部分だけが融け、そこだけがへこんだ部分になるというわけ。プリント基板を作ったことがある人ならお馴染みの方法でしょう(そんな人、あまりいないか)。
 もっと直接的な方法にドライポイントという技法があります。名古屋では「ドリャーポイント」と言いますが(ウソ)、これはニードルを使って直接銅板をひっかく技法です。通常はこのひっかく技法だとなかなかきれいな線ができにくいので、エッチングが多用されるということになります。ただ短いストロークで線を引けばそれほど汚い線にならないということが最近わかりまして、何枚かドライポイントで銅版画を作ったりしておるのです。上の2枚はどちらもドライポイントでやったもの。目下修行中といったところです……。
 もっとも銅版画、もともとは出版で普及した方法のようですが、今となっては過去の技術で、芸術家と一部の好事家以外、あまり関心のある人はいないかと思います。とは言え、僕も縁で銅版画などに関わることになったわけで、銅版画普及のために、これからもときどき銅版画の解説などを交えていこかなと思っておる次第です、ハイ(要らんとか言わないでね)。
絵はクリックで拡大します。

参考:『武蔵野美術大学 造形ファイル -- 銅版画』
   竹林軒出張所『本場の銅版画に驚嘆……別の意味で』
by chikurinken | 2012-02-27 20:21 | 美術
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