ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

山田太一のドラマ、5本

山田太一のドラマ・ベスト5
1. 高原へいらっしゃい(1976年、TBS)
2. 日本の面影(1984年、NHK)
3. 二人の世界(1970年、TBS)
4. 沿線地図(1979年、TBS)
5. 岸辺のアルバム(1977年、TBS)

山田太一のドラマ、5本_b0189364_11274749.jpg 少し前の『ありふれた奇跡』とか、この間の『キルトの家』とかを見てしまうと残念な気持ちがふつふつと湧くが、しかしドラマ作家としての山田太一はやはり偉大である。これだけオリジナル脚本の名作を立て続けに出し続ける人はもう現れないんじゃないかと思う。僕の中では、ドラマの深遠さやストーリーのレベルといった点において、脚本の神様、パディ・チャイエフスキーをもしのぐのである。
 実際、山田太一のドラマは、80年代後半以降、見る機会があれば必ず見るようにしていたし、今でもCSやBSで再放送があれば極力録画するというほど見ている。おそらくすべての山田ドラマ(150本くらい?)のうち、半分以上は見ているんじゃないかと思う。そういうわけで、山田太一の代表作は5本と言わず、ベスト10でもベスト15でも選ぶことができるんだが、とりあえずの5本。『午後の旅立ち』『チロルの挽歌』など、見たいと思っていながらいまだ見ていない代表作もある(その後見ました)ので、ベスト6以降は、またいずれ機会があれば、付け加えてまとめたいと思う。

山田太一のドラマ、5本_b0189364_11202539.jpg 『高原へいらっしゃい』は、高原ホテル建て直しのドラマで、2003年にTBSでリメイクされた。リメイク版は、脚本に山田太一が加わっていなかったこともあって(「山田太一原作」ということになっていた)、どうしようもないものになっていて、リメイクの意味というものを考えさせられる結果になった。だがオリジナルの方は、スリリングな展開といい人間関係の絶妙さといい、まさにテレビ・ドラマ脚本の金字塔と言ってもよい出来映えであった。初めて見たのは中学生くらいのとき(リアルタイムの放送)で、その後再放送を見たくて見たくてしようがなかったが、なかなか見る機会に恵まれなかった。結局数年前にCSのTBSチャンネルで再放送されたものを30年ぶりに全部見ることができたんだが、その感動は子ども時代に見たときと何ら変わっていなかった。昨今も、落ちぶれたレストランの再建ものドラマは頻繁に作られているが、その原点ともいうべき傑作である。また予想外の意外な結末も特筆に値する。出演は田宮二郎、由美かおる、前田吟、北林谷栄、益田喜頓ら。北林谷栄と益田喜頓のオムレツのシーンはあまりに強烈で、はじめに見たときからずっと記憶に残っていたほどである。
山田太一のドラマ、5本_b0189364_11184698.jpg 『日本の面影』は、ラフカディオ・ハーンをモデルにした全4回のドラマ。出演は『ウエストサイド物語』のジョージ・チャキリス、壇ふみ、津川雅彦など。先日から何度もこのブログで触れている「江戸期の日本の面影」がドラマ全編を通じて登場し、ハーンが目にしたであろう「古き良き日本」が再現されている。もちろんドラマとしても質が高いのは言うまでもない。
 『二人の世界』は、初期の山田太一の代表作で、「木下恵介アワー」の1本。その少し前に同じ枠で放送された山田ドラマ『3人家族』の続編みたいな話で、キャストも栗原小巻、竹脇無我、あおい輝彦、三島雅夫と共通する。当初は『3人家族』の恋愛ドラマの部分を抜き出したメロドラマと思っていたんだが、その後急展開してスナック経営話になる。あおい輝彦が歌うテーマ曲もメロウで、子どもの頃から主題歌だけが記憶に残っていた。
山田太一のドラマ、5本_b0189364_11235632.jpg 『沿線地図』は、個人的にドラマ全体の雰囲気が非常に好きで、特にフランソワーズ・アルディのテーマ曲(「もう森へなんか行かない」)が何とも言えない。ドラマにもアンニュイな雰囲気が漂っていた。主人公は高校生(真行寺君枝と広岡瞬)だが、思春期独特の閉塞感や焦燥感がよく伝わってくるドラマで、当時同年代だった僕も、共感はしないにしても感ずるところがあったように思う。登場する周囲の大人たち(岸恵子、河原崎長一郎、児玉清、河内桃子)にもそういった閉塞感、焦燥感が伝染していくのも新鮮である。再放送を見たいドラマの筆頭だが、いまだに見れないでいる。
 『岸辺のアルバム』も『沿線地図』と同じTBSの金曜ドラマ枠で放送されたもので、台風による増水で流されるマイホームのシーンが有名なドラマである。家族内にいろいろなゴタゴタが出てきてはこんがらがりながらも、それでも家族はなんとかやっていくという話で、『それぞれの秋』以来、山田太一が何度か取り上げているテーマである。展開に不自然さがなく、また視聴者の目を釘付けにするプロットも見事である。山田太一の名を一挙に高めた作品でもある。出演は、八千草薫、杉浦直樹、竹脇無我、中田喜子、国広富之など。
山田太一のドラマ、5本_b0189364_1120554.jpg と、こうやって紹介したところで、実際見る機会はあまりないのが現実なのである。どれもDVDは出ていないようで、必然的に再放送に期待するしかないのだが、それもあまり望めないと来ている。僕自身、CSのTBSチャンネルにリクエストしたりしているがいまだにかなわないものが多い。ただ山田太一の作品は脚本が書籍として出版されているものも多く(大和書房など)、こちらも絶版になったものが多いが、図書館には割合置かれているようだ。興味のある方は、そちらから当たられたら良いかも知れない。僕も以前、ブックオフで見つけて、まとめて10冊以上購入したことがある。なお、『日本の面影』については、今でも入手可能である。

参考:
竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、プラス10』
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『その時あの時の今 私記テレビドラマ50年(本)』
竹林軒出張所『日本の面影 (1)〜(2)(ドラマ)』
竹林軒出張所『日本の面影 (3)〜(4)(ドラマ)』
竹林軒出張所『二人の世界 (1)〜(26)(ドラマ)』
竹林軒出張所『沿線地図(1)〜(15)(ドラマ)』

by chikurinken | 2012-02-18 11:28 | ベスト
<< 『カラヴァッジオ』(映画) 『キルトの家』(ドラマ) >>