キルトの家 前編・後編(2012年・NHK)
演出:本木一博
脚本:山田太一
音楽:加古隆
出演:山崎努、杏、三浦貴大、松坂慶子、織本順吉、上田耕一、正司歌江、緑魔子
久々の山田太一のドラマということで、毎度ながらかなり期待するんだが、残念な結果だった。特に前半は、焦点もはっきりしない上テンポも悪く、かなり失望した。後半は、それなりに仕上げているが、それにしてももの足りなさは残る。
老人問題がこのドラマのテーマになっているが、これまでも『男たちの旅路』の「シルバーシート」でやはり同じ老いをテーマにしている。テーマに対する切り口がそれぞれのドラマで全然違っているのは山田太一自身が老いたからかどうか知らないが、切り口としては『男たちの旅路』の方が断然鋭かったし、何よりも冒頭から視聴者をグイグイ引きつける独特のテンポがあった。この『キルトの家』は特に間延びした感じが全体を漂っており、しかもセリフもわざとらしさを感じるようなものが多く、その上キャラクターにも魅力が乏しくて、見続けるのがちょっと苦痛になった。
加古隆の音楽も、テーマ曲は独特の雰囲気があって良かったが、ドラマの中で使われている音楽は、少しうるさく感じるようなものだった。
山崎努や緑魔子が爺さん婆さん役というのも時代を感じる。ついでに言えば、主演の2人が二世俳優(渡辺謙の娘、三浦友和の息子)というのもそう。
後半は、東日本大震災の被害者に対する山田太一のエールみたいな要素も見られ、その辺を中心に描きたかったのかなとも思ったが、それでも物足りなさは最後まで続いた。「あの」山田太一がこういう脚本を書くようになったのか……という残念な思いが最初から最後までつきまとったドラマで、見ているこっちが、ドラマの意図とは別の意味で「老い」について考えさせられたのだった。
★★★参考:
竹林軒出張所『時は立ちどまらない(ドラマ)』竹林軒出張所『よその歌 わたしの唄(ドラマ)』