にっぽん 微笑みの国の物語
「海の向こうに遺された江戸」
(2012年・NHK)
NHK-BSプレミアム ハイビジョン特集
昨日紹介した
『にっぽん 微笑みの国の物語「時代を江戸に巻き戻せば」』の後編という位置付けのドキュメンタリー。構成も前編とほとんど同じで、中村梅雀と外国人俳優の寸劇を軸に話を進めていき、その間に、テーマと直接つながっていないエピソードが30分も入る。
この後編では、明治初期に来日してさまざまな民芸をコレクションしたエドワード・モース(大森貝塚で有名な人)が主人公になる。このモースも、当時の日本人にあふれる明るさや幸福感に感心しており、同時にその工芸の水準の高さや美意識に注目している。結果的に、民芸品から生活用品に至るまで、膨大な品物をアメリカに持ち帰ることになった(現在「モース・コレクション」として一般公開されている)。この番組で注目しているのはモースが当時目を留めた工芸品であり、その一部を現在の職人が再現するという試みも行われている。また同時に、現在の職人技を紹介するコーナー(富山県高岡の金火鉢)もあり、これが30分のエピソードの部分である。確かに非常に興味深く、僕自身こういう職人技を見るのは好きなのだが、正直、前編同様番組の主旨からちょっと逸脱しているという感じは残る。この部分はもっと短くして1時間程度の番組にした方が良かったんじゃないかと思うんだが。
なお、タイトルに入っている「微笑みの国」というのは、バードもモースも(そして幕末から明治に来日した多くの外国人も)感心したという当時の日本人の幸福そうな微笑みを表している。この番組によると、当時日本が急速に西欧化しようとしていたところから、モースはいずれ当時の日本の姿が失われるのではないかと感じたらしい。このあたりは先見の明だったと言えよう。モースの予言通り、その多くは「逝きし世の面影」になってしまったのである。ちなみに、この番組で紹介されたモースやバードの日本の印象記については
『逝きし世の面影』という本で詳細に紹介されている。またモース・コレクションについては、
『モースの見た日本―モース・コレクション 民具編』、
『百年前の日本―モースコレクション 写真編』で確認することができる。興味のある方はどうぞ。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『日本その日その日(本)』竹林軒出張所『にっぽん 微笑みの国の物語 前編(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『海を渡った600体の神仏(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『明治日本散策(本)』竹林軒出張所『明治日本写生帖(本)』竹林軒出張所『シュリーマン旅行記 清国・日本(本)』竹林軒出張所『美しき日本の面影(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『新編 日本の面影(本)』竹林軒『「ラスト・サムライ」に見る「逝きし世の面影」』