1993年の女子プロレス
柳澤健著
双葉社
往年の女子プロレスラーに対するインタビューを集めた本。
著者によると、1990年代前半の日本女子プロレス界は、ハイレベルな技と生命ぎりぎりのところで闘うという異常な世界が作り出されており、それが、それまで女子プロレスが眼中になかった一般の男性プロレス・ファンまで呼び込むことになったという。そして当時の女子プロレス界を牽引したのが全日本女子プロレスのブル中野でありアジャ・コングである。その時代を頂点として、そこにつながるビューティ・ペアやクラッシュ・ギャルズの時代、その後のプロレス団体乱立時代があるが、それぞれの時代に立ち会った人々にインタビューを敢行して、あの時代をあぶり出そうというのが本書の試みである。
本書は大部分がインタビューであり、インタビューを受けるのは、ブル中野、アジャ・コング以下、井上京子、ジャガー横田、ライオネス飛鳥、長与千種ら13人で、話の密度も非常に濃く、そのためもあって460ページに及ぶ大著になっている。
こういった関係者の話を通じ、当時の全日本女子プロレスの異常さや、それぞれの思いなどがあぶり出されてきて、時代の一様相が照らし出されている。とは言うものの僕個人は、当時を含めて女子プロレスはほとんど見たことがなく、インタビューを受けた人々のこともほとんど知らず、著者が何度も主張する異常な出来事についても一切知らなかったため、読みながら戸惑った箇所もある。もっとも本書で取り上げられている主要な試合は大体YouTubeでも見ることができるし、読み進むうちに、異なる人々の異なった角度からの話によって全体像が掴めてくるので、これはそれほどマイナスではないと思う。ともかく当時、若い女性たちが体をはって過激なエンタテイメントを繰り広げながら熱い時代を形作っていたということはよく伝わってきた。
ところで、実際にYouTubeで見た女子プロレスであるが、確かに過激さがあって著者の主張もよく伝わってきたが、やはり僕のテイストにはあまり合わないという印象だった。ちなみに著者は
『完本 1976年のアントニオ猪木』の著者でもある。
★★★☆
参考:
竹林軒出張所『完本 1976年のアントニオ猪木(本)』
竹林軒出張所『蘇る伝説の死闘 猪木vsアリ(ドキュメンタリー)』