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竹林軒出張所

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原発を知るための本、ドキュメンタリー2011年版

 原発事故が実際に日本で起こったのが2011年。原発が54基もある日本で重大事故が起こるのは十分考えられていたとは言え、実際に起こってしまうと自分にとっても衝撃は計り知れない。同時にこれが原発の一掃につながるんじゃないかという期待はある。あらためて振り返ってみると、僕自身知らないことが意外に多く、今年原発関連の本を読みあさることになった。今年出版された本は良いものもあったが、便乗本も結構あって、ゴミと化すべき運命の本も多かったと思う。だが、どうせ読むなら良いものを選びたいもの。というわけで「原発を知るための本2011年版」である。ちなみに旧版の「原発を知るための本 5冊+1冊」はこちら
 原発関連のドキュメンタリーも今年多く放送され、こちらも質の高いものが非常に多かった。そのためこちらも「2011年ドキュメンタリーのベスト」として別枠で紹介しようと思う。

原発を知るための本 2011年版
1. 『原発ジプシー』
2. 『原発を終わらせる』
3. 『原発と日本の未来 原子力は温暖化対策の切り札か』
4. 『東海村臨界事故 被曝治療83日間の記録』
5. 『福島原発の真実』
番外:『大地動乱の時代 地震学者は警告する』

b0189364_10545932.jpg 『原発ジプシー』は、昨日も紹介したが今年ベストの一冊である。
 『原発を終わらせる』は、事故後出た本ではもっとも内容が充実していた本で、原発関連の専門家がそれぞれの専門分野からの視点で原発の問題点を書き綴っている。内容は若干読みにくい部分もあるが、福島第一原発事故、科学・技術的側面、社会的側面など原発を多角的に分析しており、福島原発事故後の原発学習教材のスタンダードとなるような書と言える。
 『原発と日本の未来 原子力は温暖化対策の切り札か』は、日本の原子力行政の特色を明快に示した本である。この著者も先の『原発を終わらせる』に参加していて内容的には少し重複しているが、原子力行政にも関わった人であるだけに内部からの告発として非常に説得力がある。
 『東海村臨界事故 被曝治療83日間の記録』は古い本で、1999年に茨城県の東海村で起こったJCO臨界事故を扱ったものである。この事故では放射線により2人が死亡、1人が重症を負ったが、放射線障害のすさまじさがよくわかるのでここに取り上げた。NHKのドキュメンタリーで放送された内容をまとめた本であるが、そのインパクトはテレビ放送に劣らない。
 『福島原発の真実』は、福島県の原発行政がきっかけとなって失脚した元福島県知事、佐藤栄佐久氏による著で、原発行政がどのように執り行われ、国策が地方行政にどのように押しつけられるかその過程がよくわかる。原発行政に不満を持って対立したために職を追われた元県知事の言葉だけにどれも説得力がある。原発事故前に書かれた『知事抹殺』という本もあり、こちらでは失脚の過程がより具体的に記述されている。
 番外の『大地動乱の時代 地震学者は警告する』は、原発本ではなく地震に関連する本だが、日本でどれほど地震が起こりやすいか、その構造をわかりやすく説明する。また近い将来に大地震が起こることが予測されていて、その根拠も紹介されている。ちなみにこの著者も『原発を終わらせる』に参加している……というより編者である。

原発を知るためのドキュメンタリー 2011年版
1. 『終わらない悪夢』(仏)
2. 『被曝の森は今』(仏)
3. 『チェルノブイリの真相 ある科学者の告白』(英米独)
4. 『アメリカから見た福島原発事故』(NHK教育ETV特集)
5. 『原発事故への道程 前編』(NHK教育ETV特集)

b0189364_10553072.jpg 『終わらない悪夢』は、前編、後編に分かれた90分間のフランス製ドキュメンタリーであるが、世界中の放射能垂れ流しの事例を次から次へと紹介する。特にフランスのラ・アーグ核燃料再処理工場に力を入れているが、日本でも推進されている核サイクル・システムがどういう問題をかかえているかがよくわかる。こういう現状を知るだけでも原子力に賛成するのは不可能になるんじゃないかと思うが。
 『被曝の森は今』は、旧チェルノブイリ原発周辺の現在の状況を紹介するドキュメンタリー。放射線のために生物が一切生息できなくなっているのではないかという危惧とは裏腹に、実は人がいなくなることで野生の楽園がもたらされていたという報告である。この地で実験、研究を繰り返している学者の研究結果もあわせて紹介されるが、その内容はまさに驚嘆に値する。
 『チェルノブイリの真相 ある科学者の告白』は、チェルノブイリ事故を再現ドラマにしたもの。チェルノブイリ事故の過程がよくわかる上、放射線障害の恐ろしさもよくわかる。
 『アメリカから見た福島原発事故』は、福島第一原発で使われていたMark I型原子炉の問題性が20年以上前から指摘されてきたことを示すドキュメンタリー。原子炉導入以降の日本の原子力行政のいい加減さがよくわかる。最後の20分間に収録されていた、科学ジャーナリストと元原発技術者との対談も、原子力行政の特質を物語っていて非常に面白かった。
 最後の『原発事故への道程 前編』は、日本の原子力行政の歴史を追うドキュメンタリーで、「核アレルギー」を持つ日本人の間に、「夢の技術」原子力がどのようにして浸透していったかが示される。もちろんこの番組には後編もあって、反原発勢力を中心に描かれるが、目新しさという点で前編をお奨めしたいと思う。
 NHKのドキュメンタリーは再放送されることが多いため、おそらくここで紹介したドキュメンタリー番組も今後何度も地上波かBSで放送されることと思われる。興味を持たれた方は、定期的に番組表などをチェックされると良いでしょう。

 ということで、2011年の竹林軒出張所はこれで終わりです。今年は世間ではいろいろあって大変でしたが、来年は世界にとっても皆様にとっても、平和な日々が来ることを願ってやみません。
 では良いお年をお迎えくださいますよう。
by chikurinken | 2011-12-31 10:56 | ベスト
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