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竹林軒出張所

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『坂の上の雲』(1)〜(13)(ドラマ)

坂の上の雲(2011年・NHK)
演出:柴田岳志、佐藤幹夫、加藤拓、木村隆文、一色隆司
原作:司馬遼太郎
脚本:野沢尚、柴田岳志、佐藤幹夫、加藤拓
出演:本木雅弘、香川照之、菅野美穂、阿部寛、渡哲也、柄本明、高橋英樹、藤本隆宏、松たか子、石原さとみ、竹下景子

b0189364_851263.jpg 第一部から第三部を3年に分けて放送するという無茶なプランで放送された『坂の上の雲』が先日ついに完結。前も書いたが(竹林軒出張所『坂の上の雲のドラマ版を見た』参照)、やはり3年は長すぎる。見始めたは良いが途中で(自分が)死んだりしたらイヤだなと思い見るのを控えるつもりだったが、結局全部見てしまった。僕はと言えばいまだに生きながらえている。でも実際、身の回りにこの3年間で亡くなった人はいるわけで、自分だけが例外などとは思えない。たまたま生きながらえたわけだが、断じて言う。こういう放送パターンは大変問題ありだ。ただ、元々が長い話なので、第一部から第三部に分けたのは良かったと思う。だからといって1年に一部ずつの放送を肯定しているわけではない。かつてやはり三部構成の大河ドラマ(『炎立つ』など)なども存在していたわけで、しかもデキが良かった。三部構成をまとめて放送しても一向に差し支えないのだ。
 さて前にも書いたように、原作については、過去二度、日露戦争の前(5〜6巻くらい)で読むのをやめていたため、その後(この小説が)どう展開するのか詳しいことがわからなかったが、今回ドラマを見終わって、やっとそれがすべて判明したことになる。もっともそれ以前の既読の部分も大半は忘れていた。で、このドラマが原作に忠実に作られているかどうかわからないので原作の問題かドラマ独自の問題かはわからないんだが、二百三高地のくだり(第11回)がわかりづらい上にストーリー展開に矛盾を抱えている。秋山真之の戦略の正しさを持ち上げようとしたためか知らんが、ちょっと無茶が過ぎたようだ。展開がどうにも納得できないので調べてみたが、やはり事実をちょっとムリにねじ曲げているような印象を受ける。それに、奉天会戦での秋山好古の「活躍」もそれほど特筆することなんだろうかと思う。(必要以上にしゃしゃり出る)語り部、つまり作者だが、その趣味で話を盛り上げようとしているようにも思えて、あまり良い気持ちはしない。そういうことを考えると、原作を読むのを5〜6巻くらいでやめたのもあながち外れではなかったなと思う。
b0189364_8464877.jpg 原作についてはこのようにいろいろ不満はあるが、このドラマの優れた面はなんといっても、そのスケールの大きさであろう(とこのあたり「語り部」風に語ってみた)。旅順攻防戦や日本海海戦の迫力やリアルな質感は、これまでの日本のあらゆる戦争映画を凌駕していると言っても過言ではない。海戦を描いた映画やドラマで一番見栄えが悪いのは船がいかにも模型然としていることで、ミニチュア模型を使って撮影すると、波の大きさとのバランスが悪く、模型のデキがどんなに良くなおかつ巧妙に撮影したとしても、チープさが前面に出てしまう。このドラマの海戦シーンにはまったくそういうものがなく、実際の戦闘もかくならんやと思うばかりの再現映像である。おそらくコンピュータを使ったSFXの威力なんだろうが、随分進歩したものだと思う。また、戦闘員がちょっと残虐な死に方をするのも良い。結果的に、残虐さこそが戦争であるということを強烈に印象づけることになっている。同時に死ぬ人間に敵も味方もないという表現にもつながっていて、「戦争賛美」に堕してしまわない演出が非常によかった。Wikipediaによると
<司馬遼太郎には連載中から「本作を映像化させてほしい」とのオファーが殺到していたという。しかし「戦争賛美と誤解される、作品のスケールを描ききれない」として司馬は許可しなかった。当時、NHKもオファーを行っていたが2週間考えた末の司馬の結論は「やっぱり無理やで」だったという。>
ということだが、それについては十分クリアしていると思う。また戦闘シーン以外のセットも丁寧に作り上げられていて、まったく安っぽさがない。そういう点では劇場映画としても十分通用するレベルである。
 キャストも好演が多く、本木雅弘、香川照之、菅野美穂の主役三人については前回も触れたが、東郷平八郎(渡哲也)や乃木希典(柄本明)らの軍人についても人間的魅力がしみ出ていた。阿部寛の秋山好古も豪放磊落さがよく出ていたが、少しドラマから浮いているような印象がある。もっとも秋山好古自体、原作でも少し浮いているようなフシがあるので、実は演出としてはもっとも良かったと言えるのかも知れない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『「坂の上の雲」のドラマ版を見た』
竹林軒出張所『二百三高地(映画)』
竹林軒出張所『明治天皇〈四〉(本)』
竹林軒出張所『炎立つ 総集編 (1)(ドラマ)』

by chikurinken | 2011-12-27 08:51 | ドラマ
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