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竹林軒出張所

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『21世紀の戦争 サイバー攻撃の恐怖』(ドキュメンタリー)

21世紀の戦争 サイバー攻撃の恐怖(2011年・NHK)
NHK-BS1 ドキュメンタリーWAVE

『21世紀の戦争 サイバー攻撃の恐怖』(ドキュメンタリー)_b0189364_8101671.jpg 2010年、イランのウラン濃縮施設が制御不能になり、原子力災害寸前という事態になった。
 原因は、この施設を制御するPLC(Programmable Logic Controler)にコンピュータウイルスが混入し、PLCが書き換えられて外部から制御できるようになっていたためである。
 このウイルスはスタックスネットと呼ばれ、この事故の数ヶ月前から存在がわかっており、カスペルスキー(ロシア)やシマンテック(アメリカ)などのウイルス対策会社が調査を進めていた。このWindowsウイルスは、非常に高レベルの構造になっていて、PLCを書き換えて制御できるようにするというもので、開発に相当な人材とエネルギーが投入されていて、そこらあたりのハッカーが趣味で作るレベルではないと言われていた。また、イランの核施設が狙い撃ちされていたことも特筆に値する。ということで、過去イラクやシリアの核施設を武力攻撃したことがあるイスラエルの政府機関がこのウイルスを作って、イランを標的にしたのではないかと考えられるようになった(イスラエル当局は否定していないらしい)。このような重大施設を無力化する場合、ネットを使った手段は、軍事攻撃に比べ、はるかに低コストで高効率であることから、現在では世界の軍事大国はこぞってネットでの攻撃・守備に力を入れているという。現に米軍にも比較的大きなサイバー監視組織がすでにあり、サイバー攻撃は軍の新たな分野として認識されはじめている、というのがこのドキュメンタリーの主旨であった。
 センセーショナルに描かれているが内容的にはもう一つ……というのがこの『ドキュメンタリーWAVE』の常であって、今回もご多分に漏れない。僕が一番驚いたのは、イランの重要施設で脆弱なWindows OSが使われていたということだ。むしろそっちの方が重大じゃないかと思うが。そう言えば、Windows OSが世界中の(航空会社、銀行などの)ミッションクリティカルな施設に拡大しだしたという話を何年か前に聞いて恐怖を感じたことがあるが、それが核施設にまで広がっていたということなんだろう。もちろん(LinuxやUNIXなどの)他のOSを使ったところでウイルス攻撃の危険性は常に存在するが、構造があまりに複雑化(おそらく製作者も全体像を把握できていないんじゃないだろうか)した結果セキュリティホールを常に抱えるような脆弱なOSよりは安全性がはるかに高いと思う。実際スタックスネットでは、Windowsの4つのセキュリティホールが利用されたらしい。Windowsは危険なんだということをアピールすることこそ、このドキュメンタリーの結論にすべきだったのではないか……というのが僕の結論である。
★★★

参考:
竹林軒出張所『追跡“ペガサス”(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『イランは変貌するか(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2011-12-16 08:10 | ドキュメンタリー
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