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竹林軒出張所

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『二百三高地』(映画)

二百三高地(1980年・東映)
監督:舛田利雄
脚本:笠原和夫
音楽:山本直純、さだまさし
出演:仲代達矢、あおい輝彦、夏目雅子、丹波哲郎、新沼謙治、湯原昌幸、佐藤允、永島敏行、長谷川明男、三船敏郎、松尾嘉代、森繁久彌、天知茂、神山繁、野際陽子

b0189364_851265.jpg 東映のオールスター大作で、公開当時結構話題になったことを憶えている。一般には軍国主義的だというような批判が多かったような気がするが、今回実際に見てみると、戦争賛美みたいな要素はなく反戦映画という印象の方が強い。題材が日露戦争だったためにああいった批判が出て来たのかもしれないが、批判した人々はおそらくこの映画を見ないで語っていたに違いない。自分の目で見て批評しろよなと思う。最低限のマナーだ。
 ただそういった反戦的な要素を強調しすぎたこともあり、どうにもわざとらしくなってしまっている。たとえば「休憩」の前に、さだまさしの「防人の詩」が大きな字幕付きで流されるんだが、ちょっとやり過ぎである。しかも「防人の詩」も抑えの利いていないオーバーな表現で朗々と歌われてしまい、辟易としてしまう。元々この歌自体については僕自身なかなか面白いと思っていて、シングルレコードで出ているバージョンはそんなにうるさいと感じたことはなかったんだが、映画版はちょっとたまらんという感じであった。
 さて途中で「休憩」が入るような3時間以上の大作であるこの映画、長いせいもあったのか、演出も割といい加減な印象で、おそらく俳優任せだったんだろうが、できの悪いテレビドラマみたいになってしまっている。シナリオ(特に前半のエピソード)も陳腐で、あまりの平凡さに見ていてバカバカしくなると言うのか、早送りしようかと思ったほどである。年末や年始に放送されるテレビの長時間時代劇と非常によく似た空気感で、無意味に豪華なオールスターキャストまで共通する。全編、大げさな演技、演出が繰り広げられ、「俗さ」を感じる映画になっている。また山本直純の音楽も、必要以上に大げさでがっかりであった。
 とは言え「休憩」後の後半はなかなか面白くなった。もちろん史実の再現としての面白さが中心であるが。今回この映画を見たのは、現在放送中の『坂の上の雲』で第11回「二百三高地」が先日放送されたことがきっかけである。『坂の上の雲』は、戦闘シーンも特撮を駆使して現代的な演出になっていて、迫力があり映像としてよくできているんだが、二百三高地奪還からその後の旅順港砲撃に至る過程が説明不足で納得がいかなかった。それでこの映画を見てみたんだが、この映画ではそのあたりの過程は十分な説明付きで描かれていて、その点ではこちらの映画に軍配が上がる。随時、地図が画面に出てくるのもわかりやすい。気になったのは、両方の作品で共通するセリフやシーンが多かったことで、そもそもが有名なエピソードだったのか、あるいは『坂の上の雲』がこの映画のシーンをパクったのか、にわかにはわからない。だが、児玉源太郎や伊地知幸介の風貌まで似ていたことを考えると、この映画を意識していたのかも知れない。ともかくそんなわけで、この映画、演技が臭くはあるが、後半はなかなか見所があって楽しめた。
 キャストで言えば、仲代達矢(乃木希典)と丹波哲郎(児玉源太郎)がまずまずの好演で、佐藤允が味のある役を演じていた。森繁久彌の伊藤博文は悪い冗談みたいな演技だった。カツラの下に付ける羽二重が異常に目立っていた役者までいて、もう少しなんとかした方が良いんじゃないのと思う部分まであった。三船敏郎の明治天皇は、今日的な感覚では意外なキャスティングだが、すごみがあって良かった。また昭憲皇后を演じていた松尾嘉代が妙になまめかしくてヨイ(ちょっとしか出ていないが)。幻の女優、夏目雅子も出ている(演技は平凡)。
★★★

参考:
竹林軒出張所『坂の上の雲 (1)〜(13)(ドラマ)』
竹林軒出張所『「坂の上の雲」のドラマ版を見た』
by chikurinken | 2011-12-14 08:06 | 映画
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