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竹林軒出張所

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『岐路に立つタールサンド』(ドキュメンタリー)

岐路に立つタールサンド 〜カナダ 広がる環境汚染〜 前編後編
(2011年・Clearwater Documentary/CBC/NHK)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

b0189364_10171236.jpg カナダ、アルバータ州のタールサンド開発による環境汚染を告発するドキュメンタリー。
 アルバータ州、アサバスカ川流域には、原油を含んだ砂、別名タールサンド(またはオイルサンド)が埋蔵されている。この川の流域には、世界の大手石油会社が採掘基地をもうけており、現在建設ラッシュという状況だが、タールサンドの採掘には、有毒な重金属(ヒ素、鉛、水銀など)の発生が伴い、同時に窒素酸化物や硫黄酸化物も大量に排出される。このような有毒物が、アサバスカ川流域だけでなく、その下流にあるアサバスカ湖、そして先住民が大勢居住する都市フォート・チペワイアンまで垂れ流されている。実際、流域には奇形魚が増え、住民の癌死も増えている。これを承けて、その異変に気付いた先住民をはじめとする住民が立ち上がり、環境汚染を告発し始める。
 現在カナダのタールサンドは、アメリカにとって重要なエネルギー源であり、カナダにとっても貴重な収入源になっている。そのためもあり、告発を受けても行政側はなかなか動こうとしない。それどころかむしろ告発者に圧力をかけて封じ込めようとする。先進国の事例とは思えないような様相である。
b0189364_10174897.jpg 告発を始めたデネ族のリーダー、アラン・アダムは、地元先住民のカリスマ、フランソワ・ポーレット(中写真左:祖父が1895年イギリス国王との土地条約に署名、1970年代、彼自身が、カナダ政府がこの条約を守っていないことを最高裁に告発し勝利)や著名な生態学者、デヴィッド・シンドラー(下写真:70年代のリン酸含有洗剤の禁止措置、酸性雨などの環境保護活動で有名)と協力し、マスコミを巻き込みながら告発を続ける。やがて気候変動の国際会議(コペンハーゲン)でも運動を展開し、『アバター』の映画監督、ジェームズ・キャメロンまで取り込んで、運動をカナダから国際舞台へと拡大していく。
b0189364_10195752.jpg 運動が拡大する中、カナダ政府、アルバータ州政府もやっと重い腰を上げ、住民の健康調査の実施を約束するに至る。こうして、反タールサンド開発運動は大きな進展を見たが、一方で消費側のアメリカ合衆国側は相変わらずカナダのタールサンドに依存していて、米政府はタールサンド採掘の環境破壊を黙認し続けているという現実がある。
 広範囲で大規模な環境破壊の告発ものとして優れたドキュメンタリーだが、展開が少し速く、ついていけない箇所もあった(ただしそのためテンポは非常に良い)。また同時に、新しいエネルギー源として注目されているシェールオイル(タールサンドと似たようなもの)やシェールガス、メタンハイドレードについても注意が必要であるということを、あらためて考えさせてくれるものだった(竹林軒出張所『脱原発。天然ガス発電へ(本)』参照)。新しいテクノロジーには常に危険性が伴うという教訓である。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ガスランド(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『脱原発。天然ガス発電へ(本)』
竹林軒出張所『プロミスト・ランド(映画)』
by chikurinken | 2011-12-10 10:21 | ドキュメンタリー
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