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竹林軒出張所

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『忍者武芸帳』(映画)

忍者武芸帳(1967年・創造社)
監督:大島渚
原作:白土三平
脚本:佐々木守、大島渚
音楽:林光
出演:山本圭、戸浦六宏、小山明子、佐藤慶、松本典子、福田善之、露口茂、渡辺文雄、小松方正

『忍者武芸帳』(映画)_b0189364_7555237.jpg 白土三平のマンガ『忍者武芸帳』を基にして、白土三平の作画をモンタージュして映画化したという異色作。
 カットごとに原作の絵が表示され、それが次々と入れ替わって、声や効果音が入れられるという方式で、しいて言うなら「よくできた紙芝居」である。だがマンガを実際に読んでいる感覚に近く、意外に違和感はない。実験的ではあるが、この方法自体悪くないと思える。声の出演は、大島渚に縁のある役者が多く、声優としては素人であるにもかかわらず非常にうまく、まったく違和感がない。音楽担当の林光もちょい役で出演している。また、林光の音楽も奇を衒っておらず、良い具合の存在感である。テルミンを使った効果音(音楽)も今となってはやや古臭く感じるが、この時代では普通で、異様な感じは特になかった。
 問題はやはり原作との兼ね合いで、この大長編マンガを2時間に収めるのはやはりムリがあったのではないかという点である。元々全17巻もの分量があり、枝葉をあちこちに伸ばして展開されるような割合冗長な話である。死んだと思った登場人物が実は生きていたなど、ご都合主義的な要素もある。白土本人が「泥縄式」と言うように、白土作品には行き当たりばったりの感じが常につきまとう。こういう大衆小説風な展開は、大長編だから許されるような部分がある。2時間の映画みたいに、ある程度凝縮した形で提示すると、デタラメで無茶苦茶なストーリーという印象が残ってしまう。そういう意味で白土作品は、2時間のドラマにするにはきわめて相性が悪いと言える。とは言え、原作によほど興味があれば別だが、僕など17巻すべて読もうという気にもならず、こういう形でダイジェストで見ることができれば大変助かるのである。だから映画としては高く評価したいところだ。
 なお、原作を読んでいないので、原作の絵をそのまま撮影して使ったのか、映画用に新たに描き下ろしたのかはわからない。映画化のいきさつについては、毛利甚八著の『白土三平伝 カムイ伝の真実』(竹林軒出張所『白土三平伝 カムイ伝の真実(本)』参照)に記述されていた。当時大島渚の助監督をしていた佐々木守が、大島渚のところに原作の貸本マンガをドサッと持ってきたのがことの始まりということで、大島自身が白土と直接交渉して30万円で契約したらしい。『日本の夜と霧』(竹林軒出張所『日本の夜と霧(映画)』参照)との併映でATGの映画館で公開され、大ヒットになったという。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『白土三平伝 カムイ伝の真実(本)』
竹林軒出張所『日本の夜と霧(映画)』
竹林軒出張所『変身忍者 嵐 (1)、(2)(ドラマ)』

by chikurinken | 2011-12-06 07:58 | 映画
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