海の畑
(1963年・NHK)
演出:山田達雄
脚本:寺島アキ子
出演:嵐寛寿郎、長谷川明男、沢村美司子、清村耕次

昭和38年のNHKドラマで、主演はアラカン。
東京オリンピックを前に都市開発が進む東京で、伝統的な海苔養殖を営んできた漁師が、東京湾埋め立てにより廃業に追い込まれる。誇りを持つ仕事を失うことと補償金を得ることを巡るかれらの逡巡を描く。
テーマは同時代的で、実際この年に東京大森の海苔養殖業は壊滅したという。おそらくこういったドラマが実際に起こったはずだし、その後日本中で同じような漁業権放棄の問題が持ち上がっているのも事実。こうして、近代の合理性と引き替えに伝統的な技術が失われていくことになる。そして美しい景観も。このドラマに映し出される大森の風景はこれが東京かと見まがうばかりの漁村で、50年前の東京の風景とは思えない。わずか数十年でこれだけ景観が変わるのかと思うほど。実質的には数年で激変したんだろうが。
テーマはともかくとしてドラマ自体はあまり面白味のないもので、特にシナリオがありきたりでつまらない。演出やシナリオにもう少し工夫があったら面白かったかもしれない。とは言え、当時の東京の漁村の生活の様子が窺えて、それはそれで興味深かった。
★★★