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竹林軒出張所

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『アフガニスタンの少女、日本に生きる』(本)

アフガニスタンの少女、日本に生きる
虎山ニルファ著
草思社

b0189364_847952.jpg アフガニスタンで生まれ育ち、15歳の時に戦火を逃れ、日本在住の父を頼って来日したアフガン人女性の半生記。
 著者がアフガンを出国したのはムジャヒディンの抗争の時期で、まだタリバンの時代も米軍の侵攻も始まっていないが、大変な時期だったことは変わりない。銃声は始終聞こえ、ソ連兵が自宅に押し込むこともあったという。現にアフガンの有力者だった祖父はソ連兵に殺されている。当時父は仕事の関係で日本に赴任しており母は家を出ている(その後離婚)という状況で祖父に引き取られていた著者は、途端に路頭に迷い、祖母と一緒に親戚を頼ってあちこち放浪することになる。結局叔母の家の近所に落ち着くが、そこでも家庭内労働に追われ、学校にもまったく行けなかった。そんな折、父の誘いで日本に行くことになる。ただし政治的な情勢から、普通にアフガニスタンから空路で日本へというわけにはいかない。そのため、メッカ巡礼のためにアフガニスタンを脱出し、メッカで父と落ちあい、共に日本へという決死的な計画になってしまう。本書を読んでいるとなんとなく伝わってくるんだが、その行程には常に危険が伴っており、かなり無謀な計画なんである。メッカで父と落ちあうというのも、巡礼の人々が相当な数に登ることもあり、奇跡に近い話である。それでもメッカで奇跡的に合流することができ、父と一緒に来日を果たすことになる。この辺までの話は一種の冒険譚として読むこともできる。
 その後、異国の地、日本での生活が始まる。学校に行きたいという、たっての願いも叶い、しかもその後、基礎学力がないにもかかわらず高校にまで入学する。基礎学力や語学的な背景がないため相当苦労したようだが、この辺は異文化交流の話として読むことができ興味深い。
 やがて日本の生活にも適応していき日本国籍も取得、大学への進学と卒業も果たし、その後通訳として活躍するようになる。現在はアフガニスタンと日本の架け橋となるべく積極的に活動しているとのことである。ちなみに兄も戦火のアフガンを脱出し、現在日本に住んでいるらしいが、こちらの脱出劇は著者以上にもっと劇的である。本書ではその概略にのみ触れられているが、それだけで1本の映画になりそうなほどだ。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『戦場から女優へ(本)』
竹林軒出張所『タリバンに売られた娘(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『わたしが明日殺されたら(本)』
竹林軒出張所『祖国に幸せを(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2011-12-01 08:47 |
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