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竹林軒出張所

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『流れる』(映画)

流れる(1956年・東宝)
監督:成瀬巳喜男
原作:幸田文
脚本:田中澄江、井手俊郎
出演:田中絹代、山田五十鈴、高峰秀子、杉村春子、岡田茉莉子、栗島すみ子、中北千枝子、賀原夏子、宮口精二、仲谷昇、加東大介

『流れる』(映画)_b0189364_833745.jpg 斜陽になった置屋(芸者の派遣業者)をめぐる女たちの群像劇。
 ストーリーは、起伏はそこそこあるが割に淡々と進むので、途中まで一体どういう話になっていくのか見当が付かなかった。細部に渡るまで非常に丁寧に作られていて、本当に感心することしきりであった。また、出てくる役者が超一流ばかりで、誰が主役なのかもよくわからないほどである。映画雑誌「キネマ旬報」が1985年に(歴代の)「スターBEST10」という企画をやったんだが、そのときの日本映画の女優部門1位が田中絹代、2位が山田五十鈴、4位が高峰秀子というのであるから、この映画のキャストの豪華さがわかろうというもの(ちなみに3位が吉永小百合、同率4位が京マチ子)。しかも往年の銀幕大女優、栗島すみ子まで出ているし、おそらくバイプレイヤー女優No.1である杉村春子まで出てくる。それでまた、出てくる役者の演技がどれもこれもすごく、そばにこういうキャラの人達が実在するかのようであった。切迫感があまりに巧みに表現されているため、途中たてつづけに突きつけられる厳しい現実から目を背けたくなったほどである。そのため、自分が逼迫しているような状況のときは見るべきではないかも知れない。そういう点で、ある意味リアリズムの映画である。出てくるキャラクターの魅力が救いにはなっているが、先行きの不透明さがいつまでも残って爽快さが残る映画ではない。
 派手さはまったくないが、演出や調度などどれも手堅く、隙のない、それでいて豪華な映画であった。成瀬巳喜男のすごみがあらためてよくわかった。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『浮雲(映画)』
竹林軒出張所『稲妻(映画)』
竹林軒出張所『乱れる(映画)』
竹林軒出張所『めし』(映画)
竹林軒出張所『女が階段を上る時(映画)』
竹林軒出張所『放浪記(映画)』
竹林軒出張所『このところ高峰秀子映画が多いことについての弁明』
by chikurinken | 2011-11-25 08:04 | 映画
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