ハワイアン ウエディング・ソング
〜マウイの想い出(1992年・TBS)
演出:大山勝美
脚本:山田太一
出演:小林桂樹、名取裕子、大森博、円城寺あや、倍賞美津子、井川比佐志、白石加代子
「ハワイアン ウエディング・ソング」というタイトルだが、ドラマを見ていて「ああ「ハワイの結婚の歌」のことね」ということで納得した。ドラマの中で「ハワイの結婚の歌」が演奏されるんだね。うまいタイトルだなと納得。ストーリーともシンクロしている。そういうわけで、ハワイでの結婚式が、このドラマのモチーフになっている。
ハワイのツアーに1人で参加した老人(小林桂樹)が語り部で、このツアーに参加している残りの5人は、ハワイで結婚式を挙げるために来ている新郎・新婦とその家族である。つまりこの老人だけが部外者ということになっている。ドラマなので例によって一悶着ある。新郎が直前になって結婚式を取りやめたいと言い出すのだ。前日に衣装合わせをして、あまりに自分に似合わないことを悟り、「外人の猿まねみたいな結婚式」はみっともなくてイヤだと思いはじめる。こうして、この新郎と新婦の関係、それぞれの家族の秘密がさらされることになり、誰もが抱えている問題や人生観がぶつかりあう。このあたり脚本家、山田太一の真骨頂。
1992年当時の風潮だったのかは記憶にないが、こうやって海外まで出かけていって結婚式を挙行するということに対し、大いなる批判精神で臨んでいる。アメリカ人の真似して派手な結婚式をやったところで、それが本人たち、周りの人達にとって良いことなのか……。ひいては結婚式を挙げるということに対する問いかけにもなっている。硬派な主張が心地良い。
新郎も新婦も、今まで婚期を逃してきたパッとしない若者で、街でもあまり目立たないようなちょっと冴えない人々である。こういう冴えない人々を、一見冴えない役者(大森博と円城寺あや、元々舞台の人らしい)が演じている。周囲は演技派の役者が固める。ロードムービーみたいな要素もあり、ハワイの観光名所も随時出てくる。他人同士が互いに介入しあいながら、心が一つになっていくという山田太一らしい展開になる。一種の「ハワイ珍道中」と言えるが、批判精神もあるし適度なドタバタもあるしで、「遊びはあるが無駄がない」上質なドラマに仕上がっている。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『夕陽をあびて (1)〜(3)(ドラマ)』竹林軒出張所『ちょっと愛して…(ドラマ)』