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竹林軒出張所

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『ぼんち』(映画)

ぼんち(1960年・大映)
監督:市川崑
原作:山崎豊子
脚本:和田夏十、市川崑
撮影:宮川一夫
美術:西岡善信
音楽:芥川也寸志
出演:市川雷蔵、若尾文子、中村玉緒、草笛光子、越路吹雪、山田五十鈴、毛利菊枝、船越英二、中村鴈治郎、京マチ子

b0189364_8251562.jpgネタバレ注意!

 大阪船場にある足袋問屋の5代目(つまり「ぼんち」=「お坊ちゃん」)が主人公。その5代目の半生を描いた山崎豊子の小説が原作だそうで、激動の時代(戦争の時代)を生き抜いた経営者の話とも言えるんだろうが、この主人公、飄飄としていて上品で、がっついたところがない。そのためもあって全体的にどこか柔らかいユーモアが漂っている。
 この主人公の喜久治(「きくぼん」と呼ばれている)、お坊ちゃんではあるが割合聡明かつやり手で、問屋も結構はやっている。さまざまな女に手を出すが、プライベートはすべて船場のしきたりに則って、祖母(毛利菊枝)と母(山田五十鈴)によって処理される。しきたりという女が作る世界に縛られ息苦しく、かと言って、周りの女もどれもしっかり自分の世界を確立していて結構ドライである。ロマンを求める男、きくぼんとは違う世界が周囲に形作られている。「女は怖い」と言うきくぼんの最後のセリフに説得力がある。
 監督は市川崑で、その他のスタッフ、キャストも豪華絢爛(上のメンバー見て!)。当時の大映、ひいては映画界の力を見せつけるようなラインナップである。中でも市川雷蔵と中村鴈治郎の掛け合い(最初と最後にある)が秀逸。正直ストーリーとはあんまり関係ないが、この映画の目玉と言っても過言ではない。ユーモラスなシーンで、2人の名優のすごみというかポテンシャルが存分に伝わってくる。なお、最初の妻として登場する中村玉緒は、この中村鴈治郎の娘で親子共演ということになる。
 絵作りは非常に端正で、調度も存在感があって良い。伝統家屋の美しさも巧みに表現されている。ちょっとした美術作品みたいな映像が最初から最後まで続く。しかもまったく隙がない。どのシーンも短いためか、流れも非常にリズミカルで心地良い。ちょっと端折りすぎな印象も若干あるが、しかし全体的に小気味良さを感じる。派手さはないが、市川崑をはじめとするスタッフの職人芸が光る名品であった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『細雪(映画)』
竹林軒出張所『吾輩は猫である(映画)』
竹林軒出張所『炎上(映画)』
竹林軒出張所『破戒(映画)』
竹林軒出張所『おとうと(映画)』
竹林軒出張所『太平洋ひとりぼっち(映画)』
竹林軒出張所『鍵(映画)』
竹林軒出張所『野火(映画)』
竹林軒出張所『プーサン(映画)』
竹林軒出張所『幸福(映画)』
by chikurinken | 2011-11-07 08:28 | 映画
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