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竹林軒出張所

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『バーミヤンの少年』(ドキュメンタリー)

バーミヤンの少年(2003年・英Seventh Art Production)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー<シリーズ アフガニスタン紛争10年>

b0189364_7573389.jpg 2001年に、アフガニスタンのバーミヤン石窟群にある巨大仏像をタリバンが破壊したことは記憶に新しい。その時期、この石窟群(!)に住んでいる人々がいたのである。かれらは、タリバンの治世下で家を焼き払われたりした人々で、タリバンの悪行のためにホームレスにされてしまったことになる。洞窟内は一年中砂埃が舞い、冬も非常に寒く、住むには相当劣悪な環境である。そういうひどい環境での生活を強いられた1つの家族に密着取材したのがこのドキュメンタリーで、1年スパンの撮影でアフガンの現在を映し出している。撮影時(2002年頃)、すでにタリバン政権は崩壊しており、アフガンは復興への道を歩み出しているという状況である。
 このドキュメンタリーにはナレーションが一切無く、人々の口から語られる言葉と映像で構成される。映像は非常に美しく、乾燥地帯であるというイメージしかなかったアフガニスタンの自然がこんなに美しいのかとビックリするほど。しかもタリバンによって民衆の生活が随分破壊されていたと聞いていたので、割合普通の生活が営まれているのが少し意外でもあった。しかし彼らの口から語られるタリバンの所業はすさまじいもので、その傷痕も残っているようだ。彼らの口からは、かつては豊かだったにもかかわらずソ連の侵攻、軍閥の割拠、タリバンの出現でズタズタにされたアフガンの状況が語られる。
 このドキュメンタリーでカメラが追う家族は、家長の老人夫婦とその娘夫婦、家長の子ども達(このドキュメンタリーの主役とも言うべき小学生の少年、ミールはこの一人)で構成されている。この家長の男は、タリバンの破壊活動のせいで家と職を失った結果、洞窟生活を余儀なくされた。あげくにほとんど無職で、妻からはろくでなし呼ばわりされ(タリバン時代男尊女卑が徹底されていたというアフガンでこれは意外だった。どこの国でもこのあたりは共通なんだなとあらためて思う)、現在の望みは、政府とボランティア団体が新設している新しい家を与えられること(石窟からの撤退を条件に仮設住宅に移転させるという計画がある)、そして子ども達が幸せになることである。
 そういう悲惨な状況にありながらも、子ども達は純真で、屈託なく生活している。復興に向かって進んでいるという期待感もあるのか、子ども達の表情は明るい。なにやら戦後すぐの日本の状況を思い出させる。登場する小学生の少年、ミールは元気に小学校に通っており、非常に積極的な性格で、レストランの手伝い仕事(バイトか)を見つけてきたりする。将来の夢は教師だという。タリバン後のアフガニスタンの庶民の生活がよくわかる番組で、どうかかれらに幸せをと願わずにはいられないドキュメンタリーである。
 なお、このとき家を望んでいたミールの父親は、その後、例の仮設住宅を得ることができなかったらしい。ただし政府の復興プログラムによって、故郷に帰ることができたらしい。

b0189364_7581151.jpg追記:この10年後にもう一度この少年を追ったドキュメンタリーが作られた(『バーミヤンの少年 10年の記録』)。こちらの製作にはNHKも関わっているようだ。『エリックとエリクソン』『ムツばあさんの秋』を持ち出すまでもなく、NHKはこういった「その後」の番組作りが得意らしい。ミール少年、学校にも通いながら、なんとかやっていた。バイクを乗り回したりもしてたけどね。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『アフガン秘宝の半世紀(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『武器ではなく命の水を(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『アフガニスタン 山の学校の記録(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『タリバンに売られた娘(ドキュメンタリー)』
竹林軒『圧倒的な迫力、アフガン版ネオリアリズモ』
竹林軒出張所『祖国に幸せを(ドキュメンタリー)』
竹林軒『エリックとエリクソン』
竹林軒出張所『瓦と砂金 働く子供たちの13年後(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『秩父山中 花のあとさき ムツばあさんの秋(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2011-11-04 07:59 | ドキュメンタリー
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