ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『とはずがたり マンガ日本の古典13』(本)

b0189364_8212379.jpgとはずがたり―マンガ日本の古典 (13)
いがらしゆみこ著
中央公論社

 中央公論社の古典マンガ・シリーズの一冊。これまで『御伽草子』『平家物語』『太平記』と読んできたが、どれも高水準でこの『とはずがたり』もなかなかのもの。作画は『キャンディ・キャンディ』のいがらしゆみこである。いがらしゆみこ作画であるだけに絵はいかにも少女マンガ的で、大きな黒目に光がいっぱいという美男・美女が次々と繰り出されてくる。とは言うものの、キャラクターの衣装や背景などは丁寧に描かれており、少女マンガ・キャラにさえ慣れてくれば、違和感はまったくなくなる。
 『とはずがたり』については今まであまり知らなかったんだが、鎌倉時代に後深草院の女房である「二条」という女性が書いた日記文学だそうな。日記であるだけに宮中の様子が赤裸々に語られる。しかしそれにしても何という奔放さ。御所様(後深草院)というものがありながら、西園寺実兼や阿闍梨と肉体関係を続け、(御所様公認とは言え)亀山院や鷹司兼平ともまぐわう有様である。しかも実兼や阿闍梨の子どもまで生んだりする。乱れに乱れとる! それにしても相当なモテキャラである、この二条という人は。あちらこちらの男達に憧れられちやほやされて、どこかハーレクイン風(または少女マンガ風)である。そのためかどうか知らないが他の作者によってマンガ化されたものも多く、女性にも人気の作品らしい。この二条さん、そういう奔放な青春時代を送ったせいかどうか知らないが、その後出家し、諸国を旅することになる。このあたり寂聴氏と似たような感覚なんだろうか。随所にセックス描写が出てくるが、もちろんポルノ的ではなく、きれいきれいに描かれている。
 なお、マンガは四部構成になっており、原作(五巻編成)とおおむね対応している。そういうこともあり、よくできた翻案と言える。
 ただし問題もある。「其の三 愛と死」の箇所で、おそらく3箇所程度だと思うがページが前後に入れ替わっている。そのため、死んだはずの阿闍梨が急に甦ったり、生きているはずの阿闍梨が幽霊になったりする。絵が下の部分にはみ出しているページが多く、ノンブル(ページ番号)を打っていないページがあるためにこういったことが起こったのだろうが、ちょっとひどすぎる。編集段階でわからなかったんだろうかと思う。せっかくの力作が台無しになってしまった。
★★★

参考:
竹林軒出張所『源氏物語(上)(中)(下)(本)』
竹林軒出張所『今昔物語(上)(下) マンガ日本の古典8、9(本)』
竹林軒出張所『平家物語(上)(中)(下)(本)』
竹林軒出張所『太平記(上)(中)(下)(本)』
竹林軒出張所『御伽草子 マンガ日本の古典21(本)』
竹林軒出張所『奥の細道 マンガ日本の古典25(本)』
竹林軒出張所『春色梅児誉美 マンガ日本の古典31(本)』
竹林軒出張所『日本人なら知っておきたい日本文学(本)』
竹林軒出張所『セクシィ古文(本)』
by chikurinken | 2011-10-11 08:23 |
<< 『阿修羅のごとく』(映画) 『クリケットで世界へ』(ドキュ... >>