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竹林軒出張所

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『脱原発。天然ガス発電へ』(本)

脱原発。天然ガス発電へ 大転換する日本のエネルギー源
石井彰著
アスキー新書

b0189364_17103398.jpg あまり期待せずに読んだんだが、意外に面白かった。知らない事実が非常に多く、いろいろ勉強になる。
 要は、次世代の主要エネルギー源が石油から天然ガスにシフトするという話で、現状でもこのシフトはすでにかなりの程度進んでいるということである。従来の「在来型天然ガス」だけでなく、莫大な埋蔵量がある「シェールガス」と呼ばれる天然ガスが採掘可能になったため、量的にも申し分なく(わかっている範囲でも今後400年分くらいはあるらしい)、しかも天然ガスの成分が自然界に普通に存在するメタンガスということであれば、利用に当たってマイナス要因も少ない。もちろんメタンガスは二酸化炭素以上の温室効果ガスではあるが、効率よく燃やすことができればそういう心配もないということである。事実、現時点で世界中で天然ガス採掘と利用が進められているのであって、現にアメリカの(原発を多数所有する)大手電力会社、エクセロン社も、福島の原発事故以前(2011年3月8日)に、すでに原子力から天然ガスへのシフトを発表していたという話。
 また、天然ガスの場合、コージェネレーション(発電時に出た熱も利用する方法)を利用することでエネルギー効率を現在の2倍近くにすることもできるため、現状より節電効率が高くなるという。つまり同等量のエネルギー源からでも従来よりもエネルギーを余計に取り出すことができるというわけだ。実際に六本木ヒルズでこのシステムによる発電が行われており、先日の電力危機に際して、東京電力にも余剰電力が供給されたということである。また、各家庭、各地域で燃料電池による天然ガス発電システム(コージェネを含む)を導入することも可能で、発電の分散化も現実的になるという。このような天然ガス発電の利点が、この本を読むことでよくわかるようになっている。
 ただし、天然ガスを推すあまり、他の再生可能エネルギーについては相当ネガティブな評価になっているのはいかがなものなんだろう。太陽熱や風力が主役になれないというのはある程度理解できるが、スペインの財政危機が自然エネルギーへの補助金が原因とか、ドイツの太陽光発電が(一般に流布されているものと違って)ごくわずかに過ぎないとか、ホンマかいなと思うことが多かったのも事実。もしかしたら真実なのかも知れないが、世間で言われていることとあまりに差があるので、もう少しきっちりした検証がなければにわかに信じられない。
 ましかし、そういう点を差し引いて話半分で聞いておけば、なかなか役に立つ話も多いし、非常に目新しい情報も得られたことだし、そういう点で良書であると言える。ともかく、天然ガス周辺の事情が非常によくわかる点と非常に読みやすい点を高く評価したいと思う。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『ガスランド(ドキュメンタリー)』
シェールガス採掘の実態が描かれたドキュメンタリー!
竹林軒出張所『プロミスト・ランド(映画)』
by chikurinken | 2011-09-25 17:12 |
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