僕が小学生だったとき、「石けんで手を洗おう」という歌がほぼ毎日給食の時間に流れていた。頭の中にすり込みされており、その後数十年経っているにもかかわらず、いまだに石けんを見るとついこの歌が口に出たりする。
ネットでもたまにこの歌のことが話題になっていることがあるようで、そのわりには真相がなかなか掴めないようだ。まず一つに、「石けんで手を洗おう」という歌、いくつかバージョンがあって、時代(や地域)ごとに違うようなのだ。僕がこの歌に初めて触れたのはおそらく1971年頃だったと記憶しているが、そのときの歌は、
手を出してごらん ハイ、汚い手!
手を洗いましょ ハイ、石けんで!
女の子、キュッキュ 男の子、キュッキュ
先生もキュッキュッキュ
気分はさわやか青空
食事の前に手を洗おう
ハイ、石けんで手を洗おう
というバージョン。全部うろ憶えである。ところが他にも少なくとも2つのバージョンがある。
1つ目は
はぁい順番並んで
はぁい順番手を洗おう
汚れた手丁寧に
石けんで丁寧に
泡がもくもく
こんなにぶくぶく
もくもく、ぶくぶく
い〜い気持ちー
石けんで手を洗おう
ハイ、石けんで手を洗おう
というよく似たメロディのバージョンで、歌:天知総子、作詞:伊藤アキラ、作曲:服部克久というもの(
YouTube『石けんで手を洗おう』で聴けます)。もう一つは、前の2つと随分感じが違うバージョンで、歌:前川陽子とハニー・ナイツ、作曲:嵐野英彦というもの(作詞者が確認できなかった)。

手 手 汚い手
きれいに洗おう
手 手 汚れた手
きれいに洗おう
親指 ひとさし指
キュッキュッキュ
キュキュッキュッキュ
中指 薬に小指
キュッキュッキュ
キュキュッキュッキュ
日本中で手を洗おう
世界中で手を洗おう(ハイ)
石鹸で手を洗おう
石鹸で手を洗おう
このバージョンが、実は先日借りたCD(CD
『スキャット、ボッサ&シンギング・インストゥルメンタル~嵐野英彦CM WORKS』
)に収録されていたというわけ。前川陽子には親近感を持っているが、この歌自体は初めて聞くので懐かしさはまったくない。正直知ってるものとは別物である。おそらく時代が違うんだろう。

で、ちょっとネットで調べたところ、この「石けんで手を洗おう」という曲、
日本石鹸洗剤工業会(JSDA)というところが学校キャンペーン用に作った歌ということらしい。JSDAは、1966年に石鹸PR運動を始めて、小学校や幼稚園に石鹸を配布し、あわせてキャンペーン用のソノシートも配布したのではないかと思われる(このあたり少し推測が混ざっているので100%信用なさらないように)。このソノシートが全国の小学校の昼休みに流されたということなんだろう。ちなみにそのときのソノシートは、現在一部の中古レコードショップに出回っているようだ(確認できたのは天知総子バージョンだけだった)。このソノシートのB面の「私は石けん」という歌は、これまたYouTubeで聴くことができる(
YouTube『「私は石ケン」 ハイ!石ケンで手を洗おう!』)。
このように、大勢の人が懐かしいと感じているわりには、情報も少なくしかも音源も出回っていないという、ちょっと珍しい曲である。今回「石けんで手を洗おう」がCDに収録されたのはおそらく初めてで、貴重といえば貴重である。欲を言えば、自分の馴染みのバージョンをCD化してほしいところ。
参考:
竹林軒出張所『孫にはやけに優しいがその実とんでもなく頑固な老職人を思わせるCM』