チーム・パチスタ3 アリアドネの弾丸(2011年・関西テレビ)
演出:今井和久、他
原作:海堂尊
脚本:後藤法子
出演:伊藤淳史、仲村トオル、高橋克典、尾美としのり、福士誠治、中村靖日、小西真奈美、安田顕、市川知宏
『ジェネラル・ルージュの凱旋』
に続く『チーム・パチスタ』シリーズ第三弾。

原作者の海堂尊は、著書
『死因不明社会』
などで、日本の死因究明のずさんさについて持論を展開している。日本では、事件性が高くても病理解剖されないことが多く(解剖される割合は2%程度)、死因がわからないまま事故死とされるケースが多いことに異を唱えていて、そういう現状において死亡時画像診断(Ai)が持つ意義を強調している(らしい……未読でして)。
それを受けてということになるのか、このドラマでもAiの重要性、病理解剖の重要性がしきりに強調されており、そういう意味で、海堂尊がミステリー小説を通じてもっとも主張したかったことがこの原作、ドラマに集約されているのではないかと思う。

それを考えるとまったく侮れないドラマと言うことになる。確かにAiや病理解剖の可能性や現状についてはよく知ることができたが、ドラマとしてはなんとももの足りない、というか作りすぎの印象がつきまとう。一般的にミステリー小説というのはこういうものなんだろうか。その手の本をあまり読まないのでよくわからないんだな、正直。話は確かによくできているが、思わず「ないない」と突っ込みたくなるような事件が多い。このシリーズのドラマは特に、○○サスペンスみたいなわざとらしさがないので、特にそういう点が目立つのかも知れないが、いろいろ繰り出しすぎ、やりすぎではないかと思う部分が多かった。
番組の途中から「真犯人は誰だ!?バチスタ史上最大のプレゼントクイズ」というキャンペーンをやっていて(要は犯人当て)、犯人当てを難しくするためかどうだかよく知らないが、ドラマでは犯人の見込みが二転三転して、結局そこかよという結論になったのは正直ガッカリ。特に最終回で後出しジャンケンみたいに、実はこいつが極悪人なんだよみたいに出されると、もう完全にしらけてしまう。全体的に割合よくできたドラマだっただけに、そういうところがとても気になるのだな。
キャスト面では、相変わらず伊藤淳史のぶつ切りセリフが気にかかる。グッチ(伊藤淳史)と白鳥(仲村トオル)の関係も今回はあまり新鮮さを感じなかった。一方で高橋克典がうまくはないがすごみを見せた演技をしており、小西真奈美も好演していた。
今さら気が付いたんだが、白鳥とグッチの関係って、シャーロック・ホームズとワトソンの関係、写楽保介と和登さんの関係ですな……。こういうミステリーには、謎解き担当と狂言回し担当の主役がつきものということですかね。
★★★☆参考:
竹林軒出張所
『ジェネラル・ルージュの凱旋 (1)〜(12)(ドラマ)』竹林軒出張所
『ジェネラル・ルージュの凱旋(ドラマ) まだ途中だが』竹林軒出張所
『ナイチンゲールの沈黙(ドラマ)』