フリーター、家を買う。
(2010年・フジテレビ)
演出:河野圭太、城宝秀則
原作:有川浩
脚本:橋部敦子
出演:二宮和也、香里奈、井川遥、丸山隆平、大友康平、坂口良子、竹中直人、浅野温子

有川浩の小説をドラマ化したもの。
最初に新聞広告で『フリーター、家を買う』というタイトルの本について知ったとき、てっきりノンフィクションかと思っていた。のちに小説だとわかったときも、あまり興味が湧かず、奇を衒った話なんだろうという程度の印象しかなかった。つまりタイトルに「?」ということで、確かに目を引くタイトルだが、おちゃらけた印象が伝わってきて、結局はマイナス要因になっているという感じがする。そのため、今回実際にドラマを見たところ、思った以上にしっかりしたストーリーだったこともあり、その点、意外さを感じることになった。
主人公は、3カ月で就職先を辞め、実家でブラブラしている若者である。バイトもするが、嫌なことがあると辞めてしまうという今風なキャラ設定だ。だが、自宅で一緒に暮らしている母親が欝病になってしまうところから話が急展開していく。これをきっかけに、やがて仕事に対しても真摯に取り組むようになり、自分の生き様も変えていって、人間的に成長していくというそういう話である。こうして書いてみると非常に単純でありきたりだが、プロットとサブプロットがあって、さまざまな面が同時進行しながらシンクロしていくというドラマの王道のような展開で、密度が濃い上にテーマもはっきりしていてわかりやすい。また、いろいろな部分にさまざまな仕掛けを施して展開を盛り上げる役目を果たしているため、見る側も飽きることがない。総じてよくできたドラマという印象である。
ただ、近所のいじめが原因で母親が欝病を煩う場面、つまり「家庭で起こる問題」のシーンは、少々重すぎて僕には負担が大きかった。もちろん話の展開上絶対に必要で、これがなければ炭酸が抜けたビールみたいな話になるのは重々わかるが、これだけで見るのをやめたくなるくらいの息苦しさを感じた。また、話の中の仕掛けについてもわざとらしさを感じるものがあり、いろいろ盛り込みすぎたかなというきらいはある。演出も多少オーバーな部分がある。だがしかし、全体を通してみると実に良くできた話で、登場人物もなかなかに魅力的。演出も大きな破綻はなく、安心して見ていられる。ただ浅野温子の演技がやや不気味で少しきついかな……という印象は最後まで残った……。
★★★☆