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竹林軒出張所

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『100マイルチャレンジ 地元の食材で暮らす』(ドキュメンタリー)

100マイルチャレンジ 〜地元の食材で暮らす〜
(2009年・カナダPaperny Films/Canwest)
第1回 食べ物がなくなる?!
第2回 あの好物を求めて!
第3回 料理って楽しい!
第4回 目標達成・・・そして!
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー <シリーズ 食を見直そう>

b0189364_12532552.jpg カナダのミッションという町(この名前もすごいが)で、「100マイルチャレンジ」という企画が持ち上がる。
 企画を立ち上げたのは、『100マイルダイエット』という本を書いたアリッサ・スミスとジェームズ・マッキノンで、自分の住む町から100マイル以内(約160km)で生産された食材のみで100日間生活してみようという地産地消の試みである。一般から参加者を募り、予想を超える数の家族がこの企画に参加することになる。この番組では、そのうち(ユニークな)6家族をピックアップして、100日間の足跡を追う。
 全4回、200分という長いドキュメンタリー番組であるが、内容もさることながら、見せ方が非常にうまく、短いショットをつなげながらカットバックを多用するなど、映像に絶妙なリズムがある。そのため見ていて飽きないし、発生する難題を次々に繰り出すように紹介していくという見せ方も見事である。
b0189364_12534627.jpg で、実際に100マイルの地産地消に取り組む6家族であるが、当初はどの家族も張り切っているものの、チャレンジ開始前にすでに困難に突き当たる。開始前の準備として100マイル外で生産された食材をすべてパック詰めして鍵をかけてしまうんだが、コーヒーなどの嗜好品の他、パスタ、インスタント食品などことごとくその対象になり、残った食材は野菜などごくわずかになってしまう。そのため、実際にチャレンジが始まると、朝食が満足にとれないという状況が生まれる。そういうこともあって、開始初日の朝食の段階で1家族がすぐに脱落してしまう。視聴者の側としては、この家族に冷ややかな視線を送ってしまうが、しかし同時にこの事実は、このチャレンジの困難さを物語ってもいる。実際、企画者の1人、マッキノンは、もっと脱落者が出ると思っていたと語っていた。
b0189364_12541511.jpg 最初の朝食でいきなり難題を突きつけられた残りの5家族、手元にあるもの(ジャガイモなど)を使ってなんとか間に合わせるが、急務は小麦粉を入手することだった。意外にも100マイル以内の小麦というものがない。参加者の1家族が食料品店を経営しているのだが、その主人があちこち出向いて、全家族のために小麦を入手するが、それもごくわずか。おかげでどの家族も小麦を大切に使うようになる。この企画で身にしみてよくわかるのは、食品の大切さで、食品群に制約を求めることで今まで当たり前に存在していた食材のありがたさがよくわかるようになるようだ。また同時に、こういった制約下では、自ら調理することが必須の課題になる。インスタント食品などが使えないため、みずから食べる物を調達する必要があるというわけだ。さらに自給できる食材は自給するようにする。これも重要。実際5家族の中には、家庭菜園を始めるもの、家畜を飼い始めるもの(屠殺してもらった上で自らソーセージにしていた)、魚釣りで魚を調達するもの、中には海まで行って塩を自給した家族もいる。こうして、いろいろな食材を集めることができるようになるが、基本となるのは、調理に必要なものを集めるのではなく、手に入るものをうまく調理して食べるようにすることだという。こういうことが自覚できてくると、徐々に通常の食事のレベルに戻っていく。しかも料理の内容は以前よりも奥深いものになり、食の楽しみが見出されるようなものになる。生活様式自体も変わり、持病がなくなったという人も出てくる。それぞれの家族の絆も強まっているように見える。
 最終的に、かれら5家族は100日間の100マイルチャレンジをやり遂げる。ただし1家族だけ、『100マイルダイエット』に書かれていた例外規定を利用して、ズルをしたりする。かれらは他の家族から突き上げられていたが、こういった人間模様もこのドキュメンタリーの面白い要素である。で、100マイルチャレンジを成し遂げた家族は、どの家族も、食の大切さに気付き、今後も地産地消に極力取り組むことを誓うのである。ただしこれはズルをした家族以外。あの家族(夫婦)だけは「二度とごめん」と言っていた。やはり取り組み方の真剣度によって得るものも大きく違ってくるということなのだろう。もう一つの収穫は、どのチャレンジャーも体重が大きく減っていたこと。中には10kg以上体重が落ちた人もいた(どの人も健康的にダイエットを果たしたことになる)。そしてこの思わぬダイエット効果についても、ズルをした夫婦だけには現れなかったというおまけ付きである。できすぎと言えばできすぎだが、こういったすべての家族模様が非常に面白く、内容も濃密なドキュメンタリーだった。主張もはっきりしていて、ドキュメンタリーの必須要素をすべて兼ね備えた秀作と言える。
★★★★

写真は上から「アリッサ・スミスとジェームズ・マッキノン」、「パック詰めされた食材」、「塩を自給している参加者家族」。
by chikurinken | 2011-08-09 12:55 | ドキュメンタリー
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