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竹林軒出張所

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『東海村臨界事故 被曝治療83日間の記録』(本)

b0189364_7143437.jpg東海村臨界事故 被曝治療83日間の記録
NHK取材班著
岩波書店

 1999年9月に東海村で発生した、いわゆる東海村JCO臨界事故。「裏マニュアル」に従ってウラン濃縮作業をバケツで行っていた際に、濃縮中のウランが突然臨界に達して、そのために作業員が中性子線被曝し、大量の放射線を浴びた。国内初の臨界事故だった。
 このうち、もっとも大量の放射線を浴びた大内久氏は、事故後東大病院に運び込まれ、長期に渡って治療を受けることになる。当初、比較的元気だった大内氏であるが、放射線による細胞破壊がすさまじくやがて身体中のあちこちで異変が生じていく。(放射線により)皮膚や表皮細胞が再生されなくなったことから血液や体液が浸み出す他、血液にも異常が生じて免疫機能が著しく低下する。病院のスタッフは専門の医療チームを作って治療に当たるが、放射線障害の患者のデータや経験もないことから、場当たり的な対処法しか採れず、結局、患者は事故後83日後に死亡する。本書では、その過程を、スタッフの証言を通してたどっていく。
 この本を読んでいて一番感じるのは、患者に対する医療のあり方である。いろいろな治療行為が行われるが、患者の意識が混濁するあたりから、無意味な延命治療みたいな印象を受ける。患者の痛みや苦しみも窺い知ることができ、無意味どころかむしろ医療倫理から考えるとマイナスなのではないかということだ。もっともそれは、医療スタッフの多くも感じていたようで、どこで治療を打ち切るかは彼らにとっても大問題だったのだろう。とにかく、スタッフ側もこれまで知ることのなかった放射線障害の恐ろしさをあらためて感じたようで、そのあたりも本書にテーマになっている。患者の大内氏が入院当初、治療の苦しみに耐えかねて「おれはモルモットじゃない」と発言したというのが非常に象徴的である。
 なお本書は、元々「NHKスペシャル」として製作された番組を(詳細なデータを交えて)再録したもので、元の番組はYouTubeで一部見ることができる。

参考:YouTube「東海村JCOバケツ臨界ウラン放射線・放射能被爆事故(原発関連)」(NHKスペシャルで放送されたもの。1〜5まであります)
★★★☆
by chikurinken | 2011-07-06 07:14 |
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