真空地帯
(1952年・新星映画)
監督:山本薩夫
原作:野間宏
脚本:山形雄策
出演:木村功、下元勉、神田隆、佐野浅夫、西村晃、三島雅夫、岡田英次、加藤嘉、利根はる恵

大日本帝国陸軍内部の理不尽さを描く野間宏原作の『真空地帯』の映画化。野間宏もそして監督の山本薩夫も、戦時中軍隊内で随分ひどい目にあわされていたというが、その怨み節が聞こえてくるような映画である。見ていてその不快さが十二分に伝わってきて、正直見続けるのに苦痛を感じるほどである。
こういった軍の理不尽さは、その後さまざまな映画や小説で描かれるが、その走りになったのがこの『真空地帯』で(と思う)、その内容たるや非常に厳しく、一切妥協を許さないような辛辣な描き方である。こういう環境に身を置くことだけはごめん被りたいとつくづく思う。ちなみに舞台になっているのは戦線ではなく、戦線に赴く前の兵士の訓練を行う施設(内務班)である。ロケには、当時残存していた実際の兵舎が使われたという。
僕自身てっきり今回が初見だと思っていたが、随所に記憶に残っているシーンやセリフがあった。ということで実は2回目なのだった。そう言えば佐野浅夫も見るたびに意地悪な人間かと思ってしまうが、おそらくこの映画の影響だったんだろう。
元の映像のためか映像の保存状態のためかわからないが、途中ブツブツ切れるような箇所が多く、そのあたり残念といえば残念だった。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『華麗なる一族(映画)』竹林軒出張所『金環蝕(映画)』竹林軒出張所『不毛地帯(映画)』竹林軒出張所『氷点(映画)』竹林軒出張所『仲代達矢が語る 日本映画黄金時代(本)』竹林軒出張所『兵隊やくざ(映画)』竹林軒出張所『野火(映画)』竹林軒出張所『日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実(本)』竹林軒出張所『ぼくは日本兵だった(本)』