遙かなる山の呼び声(1980年・松竹)
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
出演:高倉健、倍賞千恵子、吉岡秀隆、ハナ肇、畑正憲、武田鉄矢、鈴木瑞穂
「『幸福の黄色いハンカチ』以前」みたいな話(高倉健の役名も「田島耕作」、ちなみに『幸福の……』では「島勇作」)で、高倉健のプロモーション・ビデオのようであった。「かっこいい」高倉健が随所に登場し、北海道の自然の中で躍動する。
タイトルからもわかるように
『シェーン』を意識したストーリー展開(「遙かなる山の呼び声」は『シェーン』のテーマ曲ですな)。ストーリーに破綻はなく、予定調和過ぎることもない。良くできた話である(ちょっとできすぎな部分はなきにしもあらず)。山田洋次らしく演出も手堅く、さながら映画の教科書のようでもある。中でも倍賞千恵子と吉岡秀隆の演技が光る。吉岡秀隆は、こちらの方が
『北の国から』より早いが、子役としてはこれ以上ないような演技を見せている。倉本聰も多分にこの映画を見て、大きな影響を受けたんじゃないかと思う。そう言えば
『駅 STATION』(倉本聰脚本)にも高倉健の似たような絵面が出てくる。それに現地の行事をドラマに取り込むのも倉本の常套手段になっている。
この映画は特に映像が美しく、北海道の四季の映像が満載で、ということは少なくとも1年間はロケをやったということになるのか。ともかく素晴らしい映像のオンパレードであった。映画館のような大画面で見れば満足度は一層高かったんではないかと思う。そういう意味でも、映画らしい映画である。
追記:今気付いたんだが、この映画、『幸福の黄色いハンカチ』の前段階だが、1970年の山田洋次の映画『家族』の後の話にもなっている。初めて見るのなら、『家族』('70)→『遙かなる山の呼び声』('80)→『幸福の黄色いハンカチ』('77)の順番がよろしいようで。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『シェーン(映画)』竹林軒出張所『駅 STATION(映画)』竹林軒出張所『鉄道員(ぽっぽや)(映画)』竹林軒出張所『単騎、千里を走る。(映画)』竹林軒出張所『君よ憤怒の河を渉れ(映画)』竹林軒出張所『昭和残侠伝 唐獅子牡丹(映画)』竹林軒出張所『チロルの挽歌(ドラマ)』竹林軒出張所『刑事(ドラマ)』竹林軒出張所『証言 日中映画人交流(本)』竹林軒出張所『倍賞千恵子の現場(本)』