ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『終わらない悪夢 前編、後編』(ドキュメンタリー)

終わらない悪夢 前編後編(2009年・仏Bonne Pioche/Arte France)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー <シリーズ 放射性廃棄物はどこへ>

b0189364_9514092.jpg 原子力発電所から生みだされる廃棄物と使用済み核燃料に焦点を当てたドキュメンタリー。前編、後編で都合90分近くのドキュメンタリーだが、内容は知らないことが多く、しかも映像の裏付けもあり、強烈なインパクトを残すものだった。

 前編ではまず、かつて放射性廃棄物がドラム缶に入れられて海洋投棄されていたことを、映像を交えて紹介する。このような廃棄方法はその後1990年代になって禁止されたが、すでに相当量の廃棄物が海洋に流出している(ドラム缶は予想通りことごとく破損しており、現在はウナギの住処になっていた)。もっとも90年代に禁止されたといっても、同様の廃棄物は現在(ドラム缶ではなく)パイプを通じて排液として垂れ流されているらしい。いずれにしても、核開発にはこういった廃棄物の問題が常につきまとう。
 次に放射性廃棄物の危険な性格を示すため、アメリカと旧ソ連の核開発施設を訪ねる。かつて世界で初めてプルトニウムを生産(長崎に投下された原爆のプルトニウムもここで開発)したアメリカのハンフォード核施設では、周囲で相当な放射能が検出されている。周辺の住民や団体が調査した結果、核廃棄物がコロンビア川に大量に垂れ流されていたことがわかり、今もコロンビア川の河底に堆積しているという。また貯蔵されている高濃度廃液も地下水に漏れ出していることがわかっている。
 一方旧ソ連、現ロシアのマヤーク核施設は、1957年に爆発事故(放射性廃棄物タンクでの水蒸気爆発)を起こして周囲の環境を汚染しており、そのことも周辺住民に知らされていない。またこの核施設は湖や川に廃棄物を投棄していたため、現在その周囲から非常に高い放射能が検出されている。またその下流のケチャ川(オビ川に合流)も非常に汚染されている。だがここは現在立入禁止になっておらず、川からはチェルノブイリ並みの強力な放射能が検出されている。しかもそこは誰でも普通に立ち入りできるような状況で、住民も現地の生産物を普通に摂取している。汚染情報はまったく公開されていない。このような核汚染の深刻な状況が淡々と紹介される。

 後編は、いよいよ核心に迫り、フランスのラ・アーグ核燃料再処理工場の問題に迫る。原子力産業では、核燃料がほぼ100%再生可能な資源であるとうたっており、そのためにラ・アーグ再処理工場などで使用済み燃料を再処理し、それをリサイクルして再使用することになっている。日本でも青森県の六ヶ所村に再処理施設の建設が計画されている。で、この後編では、実際にラ・アーグでどのようなことが行われているか検証している。
 世界中から集められた核廃棄物は、いろいろなプロセス(ロボットを使った大がかりな代物)を通って再処理されウランの再生燃料が生産される。この過程で再生されるウランは公称リサイクル率96%ということである。ところが実際は、こうして再生されたウラン燃料は、コンテナに入れられ鉄道と船舶を経由して(これも怖い話だ)ほとんどロシアのトムスク(セベルスクという施設)に運ばれていた。実のところ、再利用されるのは全体の10%に過ぎず、ほとんどはこうしてロシアにコンテナの形で野積みされているのだった。つまり、ものすごい労力と金をかけた割にはわずかなウランしかリサイクルできず、しかもほとんどは核のゴミ(劣化ウラン)として他国(つまりロシア)に押しつけているという現状がある。
 もっと問題なのは、再処理の過程で相当な放射能が、排気ガス、排液という形でラ・アーグ周辺に放出されているという事実である。1年で放出されるクリプトン85(放射性物質)の排出量が、大気圏核実験500回分で放出されたクリプトン排出量よりも大きいというデータも紹介されていた。つまり無駄なことをやっているだけでなく、そのこと自体が災厄を生んでいるということなのだ(「すでに原子炉の事故が起きているような状況」だと言う意見も紹介されていた)。
 こういった核のリサイクル・システムを目指しているのは、フランスと英国、そして日本のみで、他の国はガラス容器で固め、それをさらにコンクリートで固く覆い地中に埋めるという方策をとっている(アメリカはプールに一時貯蔵)。このドキュメンタリーでは、なぜこういった妙な状況がフランスで起こっているかという問題についても考察しており、政治家が原子力行政の現状を知らず、エリート技術官僚が政策立案をすべて進めている点にあるという結論を出していた。

 放射能の垂れ流しの現状と矛盾だらけの原子力行政を、映像を交えて白日の下にさらす硬派なドキュメンタリーで、取材もしっかりしており説得力を持つ。必要以上に声高に叫ぶのではなく、取材で得られた事実を淡々と並べていく手法も良い。語り口もメリハリが利いているため、見ていて飽きることがなく、90分が短く感じるほどだった。
 なお、この番組は7月にNHK-BS1で再放送される予定。

参考:
竹林軒出張所『地下深く永遠に ~核廃棄物10万年の危険~(ドキュメンタリー)』
★★★★

後記:
 その後、DVD化されました。
 Amazonリンク『放射性廃棄物 〜終わらない悪夢〜』
by chikurinken | 2011-06-13 09:53 | ドキュメンタリー
<< 『被曝の森は今』(ドキュメンタリー) 『シリーズ原発危機 第1回』(... >>