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竹林軒出張所

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『証言 日中映画人交流』(本)

b0189364_9145083.jpg証言 日中映画人交流
劉文兵著
集英社新書

 タイトルが内容を適確に表現しているか微妙であるが、内容については非常に面白い。『中国10億人の日本映画熱愛史』(竹林軒出張所『中国10億人の日本映画熱愛史(本)』を参照)の著者による(中国映画界に影響を及ぼした)日本の映画人のインタビュー集で、登場するのは高倉健、佐藤純弥、栗原小巻、山田洋次(それぞれ1章が割り当てられている)。その他木下恵介の章もあるが、すでに故人であるため、ゆかりの人々(弟子と言える関係の山田太一、プロデューサー脇田茂、助監督を務めた本木克英)のインタビューが掲載されている。木下恵介の章には、木下恵介の中国との関わりについての論考もあるが、これはあまり必要なかったかなと思う。
 この本の魅力はなんと言ってもインタビューで、どれも新鮮かつ面白く、話し手の人間味もあふれている。特に通常あまり表に出ない高倉健や佐藤純弥が、非常に率直に自分自身や中国映画との関わりについて語っていて興味深い。「不器用」なイメージの高倉健ではなく、お茶目で活発な面も覗かれ、肉声が聞こえるようである。佐藤純弥と山田洋次のインタビューも濃密で、面白い話がたっぷり聞けたという満足感がある。どんなものであれ、珍しい経験を積んだ人の話は面白いもので、しかも映画という非常にマニアックな分野で、しかも中国との交流を中心に話を聞くというのもなかなか変わっていて、大変興味深かった。話し言葉がそのまま字面になっているようで、話の盛り上がりや興奮までそのまま記録されていて、インタビュー本の中では、最高レベルのグレードである。
 惜しいのは栗原小巻の章で、確かに栗原小巻は話し言葉も非常に丁寧で、美しい日本語を話す人ではあるが、この章については何だか書き言葉のようで、しかも非常に着飾ったよそ行きの印象がある。おそらく、栗原小巻サイドが元の原稿にかなり手を入れた(修正した)んではないかと思われるが、他のインタビューがどれもグレードが高かっただけに惜しまれるところである。

追記:昨日紹介した『単騎、千里を走る。』(竹林軒出張所『単騎、千里を走る。(映画)』)と『君よ憤怒の河を渉れ』(竹林軒出張所『君よ憤怒の河を渉れ(映画)』)についてもいろいろな箇所で言及があった。『単騎、千里を走る。』では、監督サイドが何度も高倉健にオファーを出していたが、高倉サイドが原案のシナリオに難色を示したために、都合10本ほどシナリオ原案を書き換えることになったらしい。最初に監督が出したシナリオであれば、もっとチャン・イーモウらしさが出た面白い話になっていたかも知れないなどとつい想像を働かせてしまう。
一方『君よ憤怒の河を渉れ』では、新しいヒーロー像の模索が必要だった(当時、佐藤純弥や高倉健にとってヤクザ映画からの脱却がテーマだったらしい)ということで、リアリティを度外視して撮ったということらしい。ま、そういう映画だったということだ。種明かしみたいで面白かったが。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『中国10億人の日本映画熱愛史(本)』
竹林軒出張所『中国映画を支えた日本人(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2011-06-10 09:15 |
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