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竹林軒出張所

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『中国10億人の日本映画熱愛史』(本)

中国10億人の日本映画熱愛史 ― 高倉健、山口百恵からキムタク、アニメまで
劉文兵著
集英社新書

b0189364_7562045.jpg 先日YouTubeで日本の古典的ドラマ『二人の世界』の中国語吹き替え版というのを見つけて、それがまた結構な人気を集めていたようで、『二人の世界』も中国で放送されていたのかとちょっと驚きを感じた。『おしん』や『赤い疑惑』が中国で大ヒットしたという話は聞いたことがあったが、『二人の世界』のような古いドラマが放送されていたということになると、結構いろいろなドラマが中国で放送されていたんだろう。今の日本の韓流みたいなものか。
 さて、この本であるが、文化大革命(文革)以降、中国で日本の映画やドラマに人気が集まったことについて紹介し、それについて社会学的考察を加えるというもの。
 なんでも、文革の後、日中友好ムードが高まったこともあり、日本の数本の映画が中国で熱烈に受け入れられたという。文革の間、映画産業が著しく後退したこともあり、文革が終わった後も中国国内での映画製作が円滑に運ばなくなった。そこで、海外の映画が上映されることになるのだが、中でも日本の映画が特に注目された。
 その中の代表的なものが『君よ憤怒の河を渡れ』と『サンダカン八番娼館望郷』で、特に高倉健はその後も中国で絶大な人気を維持しているという(近年、中国の代表的映画監督チャン・イーモウが主役として抜擢したことからもその影響がうかがわれる)。これは、こういった映画自体の魅力もあるかも知れないが、もっとも大きいのは当時の中国国内における社会的な要請とうまくかみ合ったせいである。近代的資本主義に触れると同時に「資本主義社会の下で表面化する矛盾」が当時の中国人民の嗜好に合ったということである。
 その後、日本映画の人気が後退するも、代わって日本のドラマ、特に『おしん』と『赤い疑惑』が大ヒットし、さらに90年代になるとトレンディ・ドラマまで人気が出たらしい。これも当時の政治や社会の状況を如実に反映したものであり、本書では、こういった映画やドラマが中国で受けた要因や社会的背景について考察が加えられている。
 日本ではよくわからなかった当時の中国事情について、映画やドラマを通じて知ることができる本で、日中映画交流史としての側面も持つ。内容が僕の興味に合っていたこともあって、一気に読み終えた。
 今のように冷え切った日中関係からは、日中にこういう文化的蜜月時代があったということ自体考えにくいが、映画などの民間レベルでの交流こそが大事であるということをあらためて思い知らされる。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『証言 日中映画人交流(本)』
竹林軒出張所『健さん(映画)』
竹林軒出張所『中国映画を支えた日本人(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『二人の世界 (1)〜(26)(ドラマ)』

by chikurinken | 2011-05-30 07:58 |
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