5月22日に岡山のKankoスタジアムでアメリカン・フットボールの関学-京大戦(以下「関京戦」)が行われた。
アメリカン・フットボールの関京戦と言えば、今はどうか知らないが、15年ほど前までは関西学生フットボール・リーグ屈指の対戦で、2万5千人もの観客を集めたものである。そうそう、知らない人に言っておくが、かつて関西で一番集客力を持つアマチュア・スポーツは甲子園の高校野球で、2番目が関西学生フットボールだったのだ。「かつて」というのは、僕が関西から離れて大分経つので今の状況を知らないためである。
どうして関西で学生フットボールがそんなに人気があったのか理由はよくわからないが、おそらく関学と京大がうまい具合に覇を競い合っていたのが面白かったんじゃないかと思う。そういう点からもこの関京戦、とても重要な一戦である。ということで、のこのこカンスタ(Kankoスタジアム)まで見に行った。フットボールの試合を見に行くのは実に20年ぶりくらい。

なぜに関京戦が岡山で?という疑問はずっと続いていたが、もらったパンフレットを見て納得した。毎年地元のチームを招いて、この時期に「瀬戸大橋ドリームボウル」というボウルゲームが行われていたが、今年は25周年記念で有力チームを招待したということらしい。関京戦といえば、野球の早慶戦に相当するような伝統の一戦で、いまは京大チームが地盤沈下したものの、ネームバリューはまだまだある(のかな)。
さて、観客も(岡山での開催ということを考えると)思った以上に多く、3、4千人はいたのではないかと思う。午前中の雨もやみ、午後からは陽差しも出てきて、暑すぎず寒すぎず絶好のフットボール日和である。僕は、ホームスタンドの最上部に陣取っていたが、ホーム側が京大応援団、バック側が関学応援団であった。関学応援団は、ブラス、チアリーダー付きの本格的なもので、シーズン中と同じレベルで、僕にとって懐かしさもひとしお。一方京大側は、応援部から2人来ていただけで、ブラスもなし。あとは地元の衆に協力を求めるという地味なものだった。関西から岡山遠征ということになるとそこそこ金もかかるし、このあたり、金持ちクラブと貧乏クラブの財力の違いが出ているのか。
試合内容も、京大ギャングスターズ(京大チームの愛称)にとっては寂しいもので、ライン戦では負けるし、ディフェンスバックはレシーバーに置いて行かれるしでお寒い内容であった。その点関学は、本格シーズン前でありながら、なかなか良い具合に仕上がっている。「完璧な形で仕上がった関学システムをズタズタにする京大ディフェンス」というかつての構図はまったく窺えなかった。もっとも第4クオーターあたりになって、京大が関学システムにアジャストしたせいか少し盛り返してきたが、大勢に影響なく、結果は30-7と関学の大勝で、今の両チームの力量を示すような結果になった。
また、関西学生フットボール・リーグの恒例で、試合前と試合後に両応援団のエール交換があり、応援していたチームの勝ち負けに関係なく、毎度ながらさわやかな印象が残る。これが関西学生リーグだよな……などと思いながら、久々のフットボールを堪能したのだった。
なお、このカンスタ、地元のJリーグ・チームのホーム・スタジアムであり、スタジアム自体は、トラックを併設した陸上競技場型でちょっとお寂しいものであるが、北に植物園、東に浄水場や操山(古墳がいっぱいある低い山)と、周りを緑で囲まれていて、周囲の眺めが最高だった。お立ち寄りの際は、ホーム側の一番上の席に行かれるとよろしいかと。また、この試合は来週、ローカル放送局で土曜の深夜(日曜日早朝)にダイジェストが放送されるらしい。
補足:関学と京大が覇を競い合っていた時代
かつて関学の黄金時代というのがあって、145連勝というアンビリーバブルな記録を打ち立てたらしい。その中には、114-0(対京大)という記録的な試合も含まれている(計算すると平均2分で1回タッチダウンということになる。京大にとっては相当な屈辱だったんではないかと思う)。
この試合から10年後(1976年)に関学の連勝記録が止まるが、その相手が京大だった。この辺が、ちょっとスクールウォーズみたいで感動的ではある。その年は関学、京大が同率優勝であったが、甲子園ボウル出場決定戦(関西代表決定戦)で関学が勝つ。翌年、満を持して臨んだ京大ではあるが、前半完全に圧倒していたものの、後半関学の意表のプレーが続出し、結局大逆転で関学が勝利することになる。この試合は、当時多くの集客が見込まれたことから、急遽会場を変更し、大量の観客を収容できる日生球場に移すことになった。しかも関西学生リーグで初めてテレビ中継されるという画期的な試合で、終了後も勝利した関学選手が号泣するなど、大変印象に残るものだったようで、その後も「涙の日生球場」として語り継がれるようになった(YouTubeにも映像がある)。
この後、京大は着実に力を付け、ついに関学を破ってリーグ優勝、学生日本一、日本選手権(ライスボウル)勝利などを達成し、関学、京大の二強時代が始まる。80年代から90年代までの関西学生リーグはこんな感じだった。
参考:
Wikipedia
「関京戦」YouTube
「涙の日生球場(1977年 関京戦)」竹林軒出張所『ザ・ビッグハウス(映画)』竹林軒出張所『ジョーイ(映画)』