ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『地獄門 デジタル・リマスター版』(映画)

地獄門 デジタル・リマスター版(1953年・大映)
監督:衣笠貞之助
原作:菊池寛
脚本:衣笠貞之助
出演:長谷川一夫、京マチ子、山形勲

b0189364_9413596.jpg 今回見たのは、NHK-BSプレミアムで放送された『地獄門 デジタル・リマスター版』である(上記のタイトルにリンクしているDVDは、今回のリマスター版ではない)。
 前に書いたように(竹林軒出張所『デジタル・リマスターでよみがえる名作(ドキュメンタリー)』)、色彩重視のデジタル・リマスターが施され、リフレッシュした……ということになっている。僕も、ドキュメンタリー『デジタル・リマスターでよみがえる名作 「地獄門」世界がみとめた色』で、その一部の映像を見たときは美しさに感心していたのだが、今回通しで見てみると、また違った感覚がある。そう、正直言って失望したのだった。
 この映画は、前にも書いたように、赤・青・黄の三色に分割されたフィルムが残されていて、リマスター作業では、それぞれのフィルムにそれぞれの色を割り当てて、1つの画像として合成する。この完成した『地獄門 リマスター版』は、確かに色のずれもなく(合成作業のときに色のずれが出てその解消に相当な労力を要したという)仕上がりも見事であるが、なにしろ色が不自然で汚い。思うに、青と赤の明度が強すぎ、しかも青がどぎつい色になっているため、青と緑が特に不自然になってしまっている。全編通してこれがとても目につく。明治・大正期にモノクロ写真に色を付けて絵はがきにしたものが出回っていたが、あれに似た不自然さで、しかももう少しどぎつくした感じと言えばよいのか、とにかく下品な色合いである。王朝絵巻みたいなものをイメージして作られた映画だと思うんだが、その再現という点では失敗と言ってよいと思う。色味をもう少し抑え気味にしていれば多少色が違っていても気にならなかったんだろうが、これだけギトギトした日にゃもうとりつく島がない。『地獄門』で色彩を担当したという和田三造もさぞかしガックリだろう。

 さて内容であるが、平治の乱の頃、長谷川一夫扮する遠藤盛遠(後の文覚上人)が、人妻の袈裟(京マチ子)という女性に横恋慕するというストーリー。菊池寛の『袈裟の良人』という小説が原作で、同じ話を材に取った小説に芥川龍之介の『袈裟と盛遠』がある。展開はいかにも菊池寛という感じで、『恩讐の彼方に』を思わせるようなものになっている。
 映画は、美男俳優の長谷川一夫がごろつきのストーカーを好演しており、山形勲の善人ぶりもなかなかのもの。京マチ子の袈裟は少し不気味な印象があって「男を虜にする女」には見えなかった。例によってセットは豪華だが、リマスターのせいで変な色ばかりが気になる。また、映画の終わりの方になると、展開がゆっくりになり時代がかった演出になって、これには少々辟易した。総じてこのリマスター版、失望感ばかりが残るものになってしまった。はなはだ残念!
カンヌ国際映画祭グランプリ、アカデミー賞外国語映画賞・衣裳デザイン賞受賞作
★★★

参考:
竹林軒出張所『デジタル・リマスターでよみがえる名作(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2011-05-21 09:45 | 映画
<< 『土の文明史』(本) 『プルパン あずき菓子はオモニ... >>