ブログトップ | ログイン

竹林軒出張所

chikrinken.exblog.jp

『華麗なる一族』(映画)

華麗なる一族(1974年・芸苑社)
監督:山本薩夫
原作:山崎豊子
脚本:山田信夫
出演:佐分利信、京マチ子、仲代達矢、山本陽子、月丘夢路、目黒祐樹、酒井和歌子、田宮二郎、香川京子

b0189364_10505986.jpg 山崎豊子の小説『華麗なる一族』の映画化。例によって山本薩夫が監督しており、山崎-山本のゴールデン・コンビによる映画である。
 主人公は、ある都市銀行のオーナー頭取で、豪腕を働かせ野望を果たさんとする。そこで動く金と権謀術策、それに乗りながら踊らされる政財界の人脈、そして金脈。日本の政財界に根付く(と思われる)ありとあらゆる欺瞞と不正が全編を通じて展開される。そういうわけで見ていていささか辟易する。そういった汚い世界の中でも、清澄な要素がいくつか出てきて、一服の清涼剤みたいな存在なのだが、こういう部分はやがて排斥されていく。本当にドス黒い、不快な部分が画面全体を支配してしまう。
 ただし汚いものが勝利して終わってしまうというのも、映画としてはなにぶん歯切れが悪く、試聴後感が最悪になる。そのためそれなりの展開にはなるのだが、それにしてもあまりさわやかな印象は残らない。因果応報というのがテーマだと思うが、気分はあまりよろしくない。ただ、映画のデキ自体は非常に良いと思う。ナレーションによる解説も必要十分で、本来であれば少しばかりややこしくなるような話が割にわかりやすく展開されている。
 ストーリーの中に銀行再編や企業倒産などさまざまな事件が出てくるが、どうもどこかにモチーフがあるんじゃないかと思わせるようなものばかりで、後で調べたところ、太陽銀行と神戸銀行の合併(1973年)や山陽特殊製鋼倒産事件(1965年)がモデルになっているということがわかった(原作は1970年から72年に雑誌に連載された小説であり時代は少々前後している)。こういう汚い話が実際にその周辺であったかどうかは知らないが、あったとしても不思議でないリアリティは感じられる。もっとも、お近づきになりたくない世界ではある。
 山本薩夫作品らしく、『不毛地帯』同様キャストは超豪華である。全編3時間半に及ぶ大作(途中に「休憩」がある)で十分見応えはある。ただし先ほども言ったように吐き気を覚えるほど汚い世界が展開され続けるので、そのあたりある程度覚悟が必要かも知れない。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『金環蝕(映画)』
竹林軒出張所『不毛地帯(映画)』
竹林軒出張所『真空地帯(映画)』
竹林軒出張所『氷点(映画)』
by chikurinken | 2011-05-09 10:54 | 映画
<< 『浮世絵ミステリー 写楽』(ド... 『ジャズ・ミー・ブルース』(映画) >>