氷点(1966年・大映)
監督:山本薩夫
原作:三浦綾子
脚本:水木洋子
出演:若尾文子、安田道代、船越英二、山本圭、津川雅彦、森光子、成田三樹夫
殺人事件あり、不倫あり、自殺あり、近親恋愛あり、近親相姦あり(ただし未遂のものが多い)と、今どきのサスペンス・ドラマを彷彿させるような復讐劇の映画。以前、あるシナリオライターが「ドラマはすべて復讐劇だ」と言っていたが、それを地でいくようなドラマである。
演出は堅実で破綻はないが、なにしろストーリーが破天荒。次から次へといろいろな要素が盛り込まれていて、さてこれからどこへ向かうのかという面白さはあったが、僕としては多少疑問符が付く。作りすぎで、正直あほくさと思ってしまう。もっとも全体的な整合性はきちんととれている。
実際のところ、山本薩夫作品としては少々もの足りないと思った。つまり、なんでこの原作?ということである。とはいうものの、この原作、その後何度もドラマ化されており、結構な人気作品のようだ。なんでも三浦綾子のデビュー作で、キリスト教的な「原罪」がテーマらしい。なるほど、三浦綾子らしいテーマではある。
大映の看板、若尾文子が非常に美しく、女子高生役の安田道代もけなげで可憐。実は安田道代という女優、まったく知らなかったが、なんでも後の大楠道代だそうで、ずいぶんな変貌ぶりであることよなあと感心した次第。
★★★参考:
竹林軒出張所『華麗なる一族(映画)』竹林軒出張所『金環蝕(映画)』竹林軒出張所『不毛地帯(映画)』竹林軒出張所『真空地帯(映画)』竹林軒出張所『日曜劇場 羽音(ドラマ)』