花の生涯 第1話(1961年・NHK)
演出:井上博
原作:舟橋聖一
脚本:北条誠
出演:尾上松緑、佐田啓二、淡島千景
2011年現在50シリーズ目を数えるNHK大河ドラマの第1作『花の生涯』の第1話である。
制作当時、ビデオ・テープが高価だったため、制作後、映像を消去してテープを使い回していたということで、現在この第1話と「桜田門外の変」のシーンしか残っていないらしい。これは1話全体として残されている唯一の『花の生涯』である。ちなみに『花の生涯』は、井伊直弼を主人公に据えた話である(このドラマでは尾上松緑が演じる)。
当時、映画全盛時代のテレビ黎明期ということで、キャストを揃えるのも一苦労だったという。五社協定というものがあって映画会社専属俳優がテレビに出ることが許されず、また映画人の側にもテレビを侮蔑するような風潮があったらしい。そういう時代に、歌舞伎界から尾上松緑、映画界から佐田啓二と淡島千景を呼ぶことは大変だったらしく、尾上松緑は歌舞伎興行をおろそかにしないという出演条件が松竹から課せられていたため収録は深夜に行われていたという(Wikipediaより)。
そういうこともあってか、尾上松緑の演技は、一般的な映画やテレビのイメージと違ったかなり大げさなもので、歌舞伎を思わせるような少しクサイものであった。また佐田啓二や淡島千景も大ぶりな演技で、小津映画に出ていたときのようなエレガンスはまったく感じられない。また、余分なカットも多く、おそらく今の感覚では切り落とすようなシーンも随所に見受けられる。当時の風潮なのか、脚本家の技量のせいかはわからない。
セットなども今見ると随分チャチである。時代考証もありきたりの感じでもの足りない。予算や当時のテレビの地位を考えると無理もないのか。とは言え、話の展開はなかなか興味深く、1話の中にそこそこ山があって、次の回も見たいと感じさせる要素はある。ただ見たいと思ってもすでに存在していないわけで、どうしても続きを知りたければ原作を読むしかない。そういうわけで、やはりどうしても資料的な価値以外感じられないようなドラマであった。
なお、本作品を収録したDVD(
『NHK想い出倶楽部II~黎明期の大河ドラマ編~(1)花の生涯』)も発売されている。図書館でもたまに見かけるので比較的簡単に見られるんではないかと思う。
★★☆参考:
竹林軒出張所『坂の上の雲 (1)〜(13)(ドラマ)』竹林軒出張所『大河ドラマ 平清盛 総集編(ドラマ)』竹林軒出張所『炎立つ 総集編 (1)(ドラマ)』竹林軒出張所『風と雲と虹と 総集編(ドラマ)』竹林軒出張所『麒麟がくる (6)〜(44)(ドラマ)』