無防備都市
(1945年・伊)
監督:ロベルト・ロッセリーニ
原作:セルジオ・アミディ
脚本:セルジオ・アミディ、フェデリコ・フェリーニ
出演:アルド・ファブリッツィ、アンナ・マニャーニ、マルチェロ・パリエーロ、マリア・ミーキ

イタリアン・ネオリアリズモの旗手、ロベルト・ロッセリーニのネオリアリズモ三部作の筆頭が、この『無防備都市』である。当時すでにハリウッドの売れっ子女優だったイングリッド・バーグマンが、ニューヨークでこの映画を見て感動し、夫と子供と地位を捨ててロッセリーニの元に走ったという話は有名である(その後2人は結婚、のち離婚)。
かつて僕もこの『無防備都市』を見ているが、初めて見たとき、ラスト15分だけ見るというあり得ない見方だったことから、それがいまだに尾を引いているのだ。というのもこの映画は、何といってもストーリーの映画であり、ラスト15分は大変重要な意味を持っている。そういうわけで二度目に最初から通しで見たときも、おそらく先入観なしで見たであろうバーグマンみたいな感動はなかったのである。今回は、通しで見るのは二度目ということになる。しかも
『戦火のかなた』と
『ドイツ零年』も比較的最近見ており、それぞれの映画にあまり良い印象を持っていないという、いわば「マイナスからのスタート」なのである。
で、どうだったかというと、これが意外に良かったのだ。前に見た映画であるにもかかわらず、スリリングで緊迫感があり、戦争映画としても非常にグレードが高い。リアリズムの映画として見ても非常に洗練されている。戦中戦後の物がない時代に作ったとは思えないほどである。映像が暗い(特に序盤)のが難点であるが、これもフィルムや設備が十分でなかったということで、仕方のないことと納得できる。それよりこれだけ物が欠乏していた時期であったにもかかわらず、これだけのものが作れたというのが奇蹟に近いとまで思う。まったくストーリーを忘れた上でこの映画を見ていたらもっと大きな感動が得られたかも知れないが、最近見たドキュメンタリー(
『チネチッタの魂 〜イタリア映画75年の軌跡〜』)でも重要なシーンがことごとく紹介されており、うかつに構えているといろいろなところで目に触れてしまうのである。映画史に残る名画であるだけに仕方がないとも言えるが、この映画を見ようという方は、極力予備知識を入れないで見るのが良いだろう。DVDのパッケージの裏にある解説なども見ない方が良いと思う。そういうわけで、このブログでもストーリーについては一切触れていないのであった。なお、この映画でも、『戦火のかなた』同様、フェデリコ・フェリーニが脚本に参加している。
1946年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作
★★★☆参考:
竹林軒出張所『戦火のかなた(映画)』竹林軒出張所『ドイツ零年(映画)』竹林軒出張所『ウンベルトD(映画)』