野のユリ(1963年・米)
監督:ラルフ・ネルソン
原作:ウィリアム・E・バレット
脚本:ジェームズ・ポー
出演:シドニー・ポワチエ、リリア・スカラ、リサ・マン、アイサ・クリノ、スタンリー・アダムス
修道女たちと行きずりの男との心温まる交流を描いたヒューマニズム映画。悪人は一切出てこず、見ていて心地良い映画である。一種のファンタジー映画で、大人向けの童話ということもできる。
タイトルは、新約聖書マタイ伝の「野のユリがどうして育つのか、よくわきまえなさい。働きもせず、紡ぎもしません。」からとられており、これについては映画の中で引用がある。おそらく原作は中短編の小説ではないかと思うんだが、ストーリーも簡潔で無駄がなく、よくまとまっている。映像はモノクロで、
『ラスト・ショー』や
『ペーパー・ムーン』を思わせるような淡々とした乾いた空気感が大陸アメリカを感じさせて、詩的で大変心地良い。
主演のシドニー・ポワチエが、現実的だが気の良い男を実に好演している。この映画でアカデミー賞やベルリン映画祭の男優賞を獲得しているが、それも頷けるというもの。随所にユーモアも漂う、大変面白い映画であった。
アカデミー賞作品賞他受賞
★★★☆参考:
竹林軒出張所『ラスト・ショー(映画)』竹林軒出張所『ペーパー・ムーン(映画)』