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竹林軒出張所

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『めし』(映画)

めし(1951年・東宝)
監督:成瀬己喜男
監修:川端康成
原作:林芙美子
脚色:井手俊郎、田中澄江
出演:上原謙、原節子、島崎雪子、杉葉子、小林桂樹、大泉滉、杉村春子

b0189364_9471379.jpg とある若夫婦(結婚5年目とか)に訪れる倦怠と再生の物語。日本版の『夜』という感じだろうか。
 監督は成瀬己喜男で、林芙美子の原作をたびたび映画化しているが、成瀬にとって本作が林作品の最初の映画化だそうだ。監修として川端康成の名前が連なっているが、実際に何をしたのかはよくわからない。原作は林芙美子の未完の遺作だそうで、そのためもあって途中から独自の脚色になっているという。なるほど林芙美子らしくない結末ではある。
 内容は、自分たちの夫婦のあり方に疑問を持ち始めた専業主婦の視点から夫婦のありようが問われるというようなもので、きわめて現代的な問題でもあるが、切り込みがもの足りないような気もする。特に今の視点から見るとちょっと甘いような、もう少し突っ込みがあった方が良いんじゃないかとも思うが、映画としてはまとまっていて良くできている。特に上原謙と原節子が演じる夫婦の人物像が非常によく描かれていてなかなか見事である。
 実は僕がこの映画で一番惹かれたのは、1951年当時の東京、大阪、川崎の風景であった。10年ほど前に実際に足を運んだ場所も出てくるんだが、映画当時の風景は戦後数年ということもあって、ひなびてはいるが趣のある江戸情緒を残すようなたたずまいで、大変感慨深かった。こういった昔の映像を見るたびに感じるのだが、大事なものを失ってしまったという感覚がいつも残る。
キネマ旬報ベストテン1951年第2位
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『夜(映画)』
竹林軒出張所『放浪記(映画)』
竹林軒出張所『浮雲(映画)』
竹林軒出張所『稲妻(映画)』
竹林軒出張所『山の音(映画)』

by chikurinken | 2011-02-26 09:48 | 映画
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