ネットが革命を起こした 〜アラブ・若者たちの攻防〜(2011年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

チュニジアの「ジャスミン革命」に端を発した中東・アフリカ諸国での革命連鎖について、ネットとの関わりを中心に解説していくドキュメンタリー。チュニジアとエジプトのケースが中心に扱われていたが、個人的には、あまり詳しいことを知らなかったため大変役に立った。
チュニジアの場合、警官から嫌がらせを受けたある路上商人による抗議のための焼身自殺がきっかけになった。この映像がフェイスブックを通じてチュニジア全土に広まり、現政権に不満を持つ人々の共感を呼んだことが発端になった。一方エジプトの場合も、反政府デモのスケジュールなどがフェイスブック経由で伝達されるなど、インターネットが強力なツールになったという。
エジプトの場合はこれまでも同様の活動は行われていたが、すぐに当局の知ることとなって弾圧されていたため、活動がうまくいくことはなかった。ところが今回は、暗号化が可能なフェイスブックが利用されたため、当局の介入が難しくなり、反政府活動の活発化を招いたという。政府当局も、ネット接続禁止などの強硬な措置を執るが、これに対しては諸外国が一斉に非難を浴びせただけでなく、「アノニマス」と呼ばれるインターネット活動家の実力行使(政府系サイトへの攻撃)により、結局5日間でネットを解放せざるを得なくなった。このように、今回のジャスミン革命関連の反政府活動には、インターネットの力が大きく作用している、というのがこの番組の中心テーマである。
世界中で識字率が向上し、民主化への意欲が広がっていく中、近年南米でも民主的な政府が登場してきていた。そういう意味では、中東・アフリカは、強権政府の最後の砦と言っても良いほどで、きっかけさえあれば民主化が進むのは想定されることであった。今回そのきっかけの重要な要素になったのがネットということなのだろう。ただし、今回のチュニジア、エジプトの両方のケースで言えることだが、強権政府を打倒したは良いが、その後の計画がまったく立っておらず、この点が従来の革命と大きく違っている部分だ。通常であれば革命は、先導する人々がいて、かれらが受け入れられ、旧勢力と衝突しこれを打倒していくという過程をたどる。したがって革命後に政権担当者がいないということはあまりない。そういう意味でも今回のケースは、歴史上特異で、今後の推移が注目されるところである。
★★★☆
参考:
竹林軒出張所『“アラブの春”が乗っ取られる?(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『チュニジア民主化は守れるのか(ドキュメンタリー)』