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竹林軒出張所

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『おむすびの祈り 「森のイスキア」こころの歳時記』(本)

おむすびの祈り 「森のイスキア」こころの歳時記
佐藤初女著
集英社文庫

b0189364_102478.jpg 以前、ドキュメンタリー『初女さんのおむすび』を見て佐藤初女さんという女性を知ったのだが、その佐藤初女さんのエッセイである。
 佐藤初女さんという方、一般の市井の人だと勝手に思っていたのだが、『地球交響曲第二番』という映画で取り上げられたこともある、結構有名な人だったようだ。そう言えば件のドキュメンタリーの中でも、「森のイスキア」(初女さんが主宰する宿泊施設)を訪れた女性から、初対面であるにもかかわらず「初女先生」と呼ばれており「著書に感動した」という言葉があった。今回僕も著書を読んで、本当に「先生」という呼称がこれほどぴったり合う人はそういないだろうと感じた。心が美しくとても立派な方である。
 この本は、基本的に著者の生い立ちや著者自身のこれまでの出会い、「森のイスキア」の開設事情などについてご自身の手で書かれたものであるが、何よりも文章と内容が非常に純粋で美しく、まるで心が洗われるような心持ちがするほどである。文章が率直で素直なせいか(そのあたりはよくはわからないんだが)、癒されるというようなものともまた違って、読んでいるこちらの心の中が浄化されていくような、そういう感覚である。著者はクリスチャンであるため、内容は多分に宗教的であるが、押しつけがましさはまったくなく、非常に清らかな印象を受ける。
 食べ物についても非常に丁寧に処理されるらしく(命をいただくという考え方に基づいているらしい)、食べ物に対するその考え方は、食事をないがしろにしている僕のような人間の心にも素直に響いてくる(真似できるかどうかはまた別だが)。食事の大切さについてこれほど身をもって伝えられる人を僕はこれまで知らなかった。ドキュメンタリーで見たその料理作法も非常に優しく、優雅であったように記憶している。
 「森のイスキア」では「心を病んだ人、苦しみをかかえた人」にそっと寄り添い、元気を与えているが、そのこと自体が初女さんにも元気を与えているという(彼女自身も、同様の苦しいときを体験している)。献身のすばらしさや人に優しくすること、人を大切に思うことの価値が実感できる神々しい著書で、同時に初女さんに寄り添われているような暖かささえ感じる。そんな本である。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『初女さんのおむすび(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2011-02-12 10:03 |
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