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竹林軒出張所

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買った、見た、ふるえた……キックの鬼 最終章

 先日からキックボクシング付いている私でありますが、ついに異常な関心が高じて、DVDを買ってしまいました。で、その日のうちに見ました。

前回までの経緯
1.『キックの鬼』
2.『真空飛び膝蹴りの真実 “キックの鬼”沢村忠伝説(本)』

b0189364_20341542.jpg沢村のDVD
 今回買ったのは『“キックの鬼” 沢村忠/真空飛びヒザ蹴り伝説』というDVDで、定価は5,000円。5,000円という価格については、一般的なDVDの価格帯であり、さして高価というわけではない。しかしDVDを買うという習慣があまりないので(DVDは借りるものという勝手な思い込みがある)購入を決めるまで多少逡巡したが、ここは一発、清水の舞台から……もとい、動きの中から真空飛びヒザを狙うような心境で(「思い切って」と言う意味合いです)購入に踏み切ったというわけだ。というのも、あちこちのレンタル・ショップを探してもどこにも見当たらなかったためで、それにこのDVDの性格上、近所のショップに入荷する可能性というのもきわめて低いだろう。また、発売が2003年であることを考え合わせると、ヘタをすると絶版になって今後見る機会が途絶えてしまう可能性すら頭の中でちらついたのである。今の僕にとって5,000円は小さくないが、こういうところは意外に思い切りが良い。

沢村忠登場!
 さて、届いたDVDを再生すると、なんといきなり現在(2003年時)の沢村忠が登場する。今でも「健在」とは聞いていたが、映像とは言え普通に動きしゃべっているところを目にすると何とも感無量である。その沢村氏が、これから自分が選出した8戦を紹介していくとおっしゃる。どれも本人にとって思い出深い対戦だったとのことだ。そのラインアップは次の8試合。

1 対サマン・ソー・アディソン(66年6月、渋谷リキパレス)
2 対ポンチャイ・キャッスリア(68年9月、タイ・ルンピニー・スタジアム)
3 対モンコントン・スィートクン(69年6月、日本武道館)
4 対サネガン・ソーパッシン(72年10月、後楽園ホール)
5 対梅木清光(73年8月、後楽園ホール)
6 対ナムカブアン・クロンパチョン(73年10月、富山市体育館)
7 対コングパタピー・スワンミサカワン(75年1月、後楽園ホール)
8 対チューチャイ・ルークパンチャマ(75年7月、後楽園ホール)

 沢村がのびてしまったあのチューチャイ戦(竹林軒出張所:『キックの鬼』を参照)も含まれている。しかしなんと言ってもすごいのがサマン・ソー・アディソン戦である。これは空手家時代の沢村が、ムエタイ選手と異種格闘技戦を行った試合で、1戦目は何とか勝ったが、2戦目(つまりこの試合)で強敵と当たってボコボコにやられたという試合である。よく映像が残っていたなという類の伝説の一戦なのである(そういうわけで他の試合と異なりダイジェスト版)。
 この試合で沢村は16回ダウンを喫しており、試合後は、全身を37箇所打撲し、後頭部も陥没していたらしい。入院してから高熱が一週間続いたらしく、プロモーターの野口修は沢村の再起不能を悟ったという(『真空飛び膝蹴りの真実』より)。そういうエピソードは別にして、純粋に異種格闘技戦としてこの試合を見ると、空手着姿の沢村が、勝手の違うルール、対戦相手によく健闘しているのがわかる。いかにも空手家らしい一発狙いの戦い方で、柔軟なムエタイ式の戦い方に手こずってはいるが、それでも序盤は対等に闘っている。だがやはり1ラウンド3分×複数ラウンドという試合形式が堪えたようで、回を追うごとにスタミナが落ちてくるのがよくわかる。ボクシング式のスタミナさえしっかり付けられれば、この状態でも十分ムエタイと戦えるのではないかと思わせるようなポテンシャルの高さをうかがわせる。そういう試合であった。
 DVD第2戦目のポンチャイ・キャッスリア戦も、伝説の闘いと言って良い試合である。この試合は、アニメ『キックの鬼』で劇的に紹介されているカードで、アニメでは、熱戦のために最後はヘトヘトになった両者が、立て膝を付いた状態で殴り合い、タイムアップ後は涙を流しながら健闘をたたえ合うという感動的なシーンだった(ような記憶がある)が、その実写版というかオリジナルの映像がこれである(これもダイジェスト)。これも今回初めて目にした。ただ、アニメのような劇的な感動シーンはもちろんなく(梶原一騎作りすぎ!)、もつれる場面が非常に多く、いかにもムエタイという試合であった。沢村はアグレッシブで気持ちの良い戦い方ではあるが、テクニック的にはもう一つという印象を受ける(この試合は引き分け)。

沢村選手の印象
 実はこのDVDを見る前は、現役のK-1選手なんか目じゃないくらいおそろしく強い沢村忠を想像していたのだが(『真空飛び膝蹴りの真実』の影響、記述がオーバーなんだ!)、映像を見て大分印象が変わった。まず、特にキャリア前半だが、パンチがいわゆる猫パンチ風で、あまりさまになっていない。キックはしなやかかつ強力で、キック系の選手というイメージである(キャリア後半では非常に良いパンチをはなっている)。また、ガードがかなり甘く、パンチをかなりもらうタイプの選手であると思った。それを示すように、サネガン戦、コングパタピー戦は殴られてフラフラになりながらの闘いで、とにかくパンチをもらいすぎという印象である。一方で、攻め味が強く、打たれても打たれても前に出るというファイターでもあり、そのためもあって壮絶なノーガードの殴り合いというパターンが多く、見ていて非常に面白い。今はいないタイプの選手である。人気の秘密はこのあたりにもあったのではないかと思う。
 また、必殺技の真空飛び膝蹴りであるが、アニメの「一点をめがけて飛ぶ」というイメージではなく、ジャンプして膝を当てるというイメージである。確かに膝が顔に当たるだけで強烈なダメージがあるはずで、それを考えるとこれだけで必要十分と言える。DVDには、真空飛び膝蹴りのフィニッシュ・シーンを集めたダイジェスト映像もあって、その迫力を堪能できる。キックボクシングでは、ヒジ打ちも認められており、ヒジ打ち、飛び蹴り、飛び膝など、今の打撃系格闘技よりも、凄惨なシーンが多いように感じた。沢村からハイキックを受けたタイ人選手が目を向いている映像なんかもあった。

 ともかく、沢村という選手は非常に絵になるファイターであるということが、今回あらためてよくわかった。それぞれの試合は、石川顕アナウンサーの実況と寺内大吉の解説が入るが、副音声では沢村自身が解説していてこれも興味深い(聞き手の舟木昭太郎が少し鬱陶しいが)。また「寺内さんの採点」が全然なっていないのも今回のDVDで確認できた。このように隅から隅まで非常に楽しめるDVDで、十分堪能することができたのであった。満足いたしました。

「キックの鬼」シリーズ 完


参考:
竹林軒出張所『キックの鬼』
竹林軒出張所『真空飛び膝蹴りの真実 “キックの鬼”沢村忠伝説(本)』
竹林軒出張所『四角いジャングル 激突!格闘技(映画)』
by chikurinken | 2011-02-05 20:37 | 映像
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