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竹林軒出張所

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「電子書籍の時代は本当に来るのか」についての考察

b0189364_1356061.jpg 電子書籍のことなんかいろいろ予測しても始まらないんだが(所詮なるようになるし、なるようにしかならないのだ)、昨日の本(『電子書籍の時代は本当に来るのか』)で少し刺激を受けたので、ちょっとだけ考察してみようかと思う。
 書籍がいずれは電子化され、デジタル・データとして販売、流通するのはもう火を見るより明らかなんだが、紙の本(印刷版)に完全に取って替わる、つまり印刷版がなくなるというのはありえない……と思う。というのは、印刷版には依然としてデジタル・データに勝るメリットがあるためだ。とは言うもののデジタル・データの方が優れている部分もある。
 印刷版がデジタル版より優れている部分というのは、端末が要らない、エネルギーが要らない、読みやすいの3点である。一方デジタル版が優れている点は、蓄積ができる、検索ができる、読書体験を向上できる(表示方法の工夫が考えられる)という3点である。読書体験の向上というのは、たとえば必要な図表を画面の一部に常時表示する(印刷版だと図表が掲載されているページに随時戻って参照することになる)とか、登場人物が多くて誰が誰だかわからなくなったとき(僕の場合、翻訳小説でこういうことがよくある)に登場人物一覧や登場人物のイメージ画像をすぐに呼び出すとか、いろいろな工夫を盛り込むことで読書を便利にできるということだ。そういうわけでデジタル版にはいろいろな可能性があるが、なんと言っても、デジタル書籍を見るための機械が必要で、電源も必要になる。電池を使っても電池切れの可能性が常にあって、電池が切れてしまったらただの荷物でしかなくなる。当然そこそこの重さになるだろうし、そういう点を考え合わせると機動性は通常印刷版の方が高い。ただしデータが大量にある本(辞書や百科事典)や、多くの本を持ち運ぶということになれば話は違ってくる。そういうわけでそれぞれに違うメリットがあるので、デジタル版の条件さえが揃えば、印刷版とデジタル版の両方が流通するだろうというのは容易に想像がつく。
 さて、そのデジタル版の条件であるが、第一の条件は、インフラストラクチャができあがること、つまり「読書のための端末」が広く行き渡ることである。これはAmazonのキンドルとアップルのiPadが現在起爆材として機能しており、電子書籍がやたらとあちこちで取りざたされるようになったのもこのあたりが要因になっている。いろいろなメーカーからもいろいろな端末が発表されており、値段が下がって入手が容易になれば、インフラストラクチャは形成されることになる。
 第二の条件は、デジタル版の販売経路である。これもAmazonがキンドルでビジネス・モデルを打ち出しており、こういうスタイルが標準になると思われる。つまり、販売側が一定の畑(キンドルの場合はAmazonのサイト、iPadの場合はiBooksもしくはアップストア)を用意して、その中で展示販売するという方法である。この方法の場合、会員登録の際に課金方法(多くの場合クレジットカード)を設定することで、本を買うたびにクレジットカード・データを入力するなど面倒な手続きを強いる必要がなくなり、購入の際の敷居を下げることができる。
 現在、この2つの条件が出そろい始めているので、いずれデジタル版の流通もどんどん進んでいくと思われる。また、デジタル版のメリットが強調されていけば、そのスピードにも拍車がかかるのではないかとも想像される。
 したがって「電子書籍の時代は本当に来るのか」という問いには、「そりゃ来るでしょうよ!」という回答を個人的に提出したいと思う。
by chikurinken | 2011-01-12 13:56 | 社会
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