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竹林軒出張所

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『コミック貧困大国アメリカ』(本)

コミック貧困大国アメリカ
堤未果著、松枝尚嗣漫画
PHP研究所

『コミック貧困大国アメリカ』(本)_b0189364_11402264.jpg 『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)をマンガ化したもの(らしい)。元本を読んでいないのでどこまで反映されているかはわからない。
 教育、医療、くらしが、市場原理に飲み込まれて完全に破綻してしまったアメリカの現状を、マンガでわかりやすく紹介している。エピソードをマンガで、その後に文章でその解説という構成になっている。出てくるエピソードは「サブプライムローン」、「貧困と肥満」、「医療と破産」、「医師たちの転落」、「出口のない若者」、「戦争とワーキングプア」の6本で、どのエピソードもNHKのドキュメンタリーなどで何度も見聞きしているものだが、マンガになると衝撃度が一段と上がる(表現がオーバーなためか)。絵もきれいで、マンガとしての完成度も高い。マンガの中でも、重要な箇所はト書きのような形で説明文で解説されており、そのあたりはマンガの限界といえば限界か。それぞれのエピソード(章)の最後にある解説も、絵による展開に慣れてしまっているため、一挙に読みづらくなるような感覚に陥る。マンガと文章の乖離を少しばかり感じる。
 しかしそうは言っても、アメリカの貧困状況を伝えることには成功しており、企画としては素晴らしいものと言える。せめて日本はこういうふうにはならないよう願いたいものだ。アメリカのこの状況を反面教師として多くの人々に広く知らせる上で、手軽にアクセスできるマンガという手段は恰好のものだと思う。そういう意味でも「真摯な」良書の部類に入る。ま、でも、あまり売れないだろうなとも思う……『マネドラ』と違ってね。
★★★☆
by chikurinken | 2010-10-30 11:40 |
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