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竹林軒出張所

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『音楽好きな脳』(本)

音楽好きな脳 人はなぜ音楽に夢中になるのか
ダニエル・J・レヴィティン著、西田美緒子訳
白揚社

『音楽好きな脳』(本)_b0189364_1941611.jpg タイトルが示すように、音楽に対する脳の反応について、認知心理学の立場から説いた本。著者は、元音楽プロデューサーで、その後研究職に転じたという異色の学者である。
 「人はなぜ音楽に夢中になるのか」というテーマは非常に興味深く、それに対する回答も終わりの方で紹介されているが、全体的にとりとめがない感じで、雑談をまとめたような本である。認知心理学や神経科学において、現時点で音楽の働きがどのように解明されているか、広範に解説されているが、あちこちに話が飛ぶような印象があり、読後に何かを掴んだというような達成感は得られなかった。「音楽の心理学」に関する雑学といった内容、構成で、喰い足りなさが残る。
 「人はなぜ音楽に夢中になるのか」という問題設定の回答は、乳幼児にとって音楽が言語の習得を助けること、音楽がコミュニティ内の連帯において大事な役割を果たすということ、孔雀の羽根と同様、音楽が生殖上優位に働くことなどの理由から、音楽が人間にとって大切であるためということらしい。まあ納得できる結論ではあるが、他の部分との関連性があまり感じられず、全体的に面白くはあるがなんかモヤモヤするのだ。そういうわけで、書かれている内容をすぐに忘れてしまいそうな本になってしまった(僕にとって)。できることなら、全編を貫くテーマを設定して、それについて論証するような構成にしてほしいと思う。
★★★
by chikurinken | 2010-10-12 19:05 |
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